日立の考えるニューノーマルのパラダイムシフトとQoLを高めるビル空間の創造:Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE(1/3 ページ)
コロナ禍でクローズアップされた“ニューノーマル(新常態)時代”には、これまでの考え方を変えるパラダイムシフトが必要とされる。その中心にあるのは、「感性価値の充実が幸福につながる」という考えだ。これまでは、スピードや量といった数字で表現できる価値が重視されてきた。しかし、ニューノーマルでは、地球が持つ生命環境の容量を前提として、多様性に富んだ組み合わせをどれだけ提供できるかが問われるという
日立グループ最大規模のオンラインイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE」(会期:2020年11月4〜6日)で、日立製作所は「ニューノーマル時代の新たなパラダイムとQoL(Quality of Life)を高めるビル空間の創造」のテーマで講演を行った。
コロナ禍をきっかけに、今後の生活の在り方や新しい働き方への関心が高まっている。この関心の方向性は、持続可能な17の開発目標を示す「SDGs」と合致する。そして、今までとは違う、ニューノーマル時代に向けた新たな認識と枠組みの必要性がクローズアップしている。
講演は、このような背景の中で、これからのオフィスや住まいの質や価値、社会全体はどう向き合うべきなのかを指し示した。
本講演は、造園家/ランドスケープアーキテクトの涌井雅之氏を迎え、日立製作所で長年エレベーターの開発に携わる藤野篤哉氏との対談形式で行われた。モデレータは、日経BPコンサルティングの斎藤睦氏。
今回のイベントは、新型コロナの感染防止を考慮し、オンラインでの開催となった。講演では、オンラインの特性を生かし、聴講者を対象としたアンケートからスタート。質問は「コロナ禍で仕事のやり方や生活のスタイルは変わりましたか?」というもの。選択肢として以下の3つが用意された。
Q1.「多少の影響はあったものの基本的には変わらない」
Q2.「大きく変わったが状況が落ち着けば元に戻るだろう/戻った」
Q3.「大きく変わったしコロナが収まっても元に戻らないだろう」
結果は、以下の通り。
A1.「多少の影響はあったものの基本的には変わらない」:17%
A2.「大きく変わったが状況が落ち着けば元に戻るだろう/戻った」:17%
A3.「大きく変わったしコロナが収まっても元に戻らないだろう」:66%
涌井氏は、この結果を受け、「大きく変わって元に戻らないだろうと答えた方が多いのは印象深かった。社会的大変革が起きる、あるいは起こさねばならないという声は、国際的に見ても少なくない」と語った。
その原因の一つとして、地球環境の問題を挙げた。温暖化に代表される環境への関心が集まっている時期に、世界で同時に新型コロナウイルスによる惨禍を経験した。これにより、持続的な世の中を目指すという方向性が一層強まった。「持続的な世の中を目指す(世の中の)流れがあり、アンケートはその潮流を元に戻してはならないことを示している」(涌井氏)。
藤野氏も、日立グループでは2020年4月から仕事がリモート中心になり、この体制が今後も続く前提で、仕事のやり方を変えていることを紹介した。また、コロナの影響がエレベーターの稼働データに表れていることにも言及。大きく落ち込んだ需要に向けて、新しい使い方を提案していく必要性を模索していると語った。
建設・不動産は、他業種よりもテレワークの実施が難しい
講演では、日経BPコンサルティングが緊急事態宣言後に実施したアンケートの結果も紹介。アンケートでは、建設・不動産業とその他の業種に分け、コロナ対策やテレワークについて現状の取り組みを聞いている。
アンケート結果では、建設・不動産業と他の業種では新型コロナへの対策や課題が、かなり異なっていることが浮き彫りになった。
とくにテレワークでは、全業種の71.9%が推奨・指示が出ているのに対し、建設・不動産では53.8%にとどまっている。この数字は、“現場”が何より重要な建設・不動産業の特徴が反映されたものと解釈できる。また、テレワークの課題では、「必要な書類の出力やスキャンができない」という項目が建設・不動産業では66.2%あり、他の業種を凌駕(りょうが)していることも特徴として表れた。
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