東京建物が施設内の設備と状況を見える化するDBMを日本橋のビルに導入:導入事例
東京建物は、2019年5月にZETA通信を利用したビル間の無線通信の実証実験を行った。実証実験では、ZETA通信でデータ損失の無い完全なデータ伝送が行われ、スマートビルディングの実現でZETA通信の有用性が高いことを確認。その後、ビルマネジメントにおけるZETA通信の活用について検討を進め、ZETAセンサーによる設備の遠隔監視と点検作業のデジタル化の機能を備える「Dynamic Building Matrix」の試験導入に至った。
東京建物は、テクサーとシリコンテクノロジーの技術協力を得て、クラウドとZETA通信を利用したスマートビル管理システム「Dynamic Building Matrix(DBM)」の実証実験を東京都中央区の東京建物日本橋ビルで開始したことを2020年12月1日に発表した。
約400箇所に位置情報が埋め込まれたQRコードやNFCタグを設置
DBMは、ビル管理業務に必要な情報を統合し、可視化するクラウド型のビルディング・マネジメント・システムで、中心にプラットフォーム「Godzilla」を据え、業務管理システム、設備・資産管理システム、3D空間可視化プラットフォームなどの各システムで構成。ビル内の状況や点検業務、空気環境など、ビル管理で必要な情報を統合しデータ化する。
今回の実証実験では、東京建物日本橋ビルでDBMの各機能を用いて、「モバイルアプリケーションの活用による点検作業時間の削減」「故障や異常発生時の正確な共有、対応の迅速化、記録の蓄積」「東京建物日本橋ビルの3D化表示」の効果を検証した。同時に、ビル管理の視点からDBMの改善点を洗い出し、機能拡張についても検討する。
モバイルアプリケーション活用による点検作業時間の削減では、点検業務の一部を専用モバイルアプリケーションで行い、点検で要する手間の削減と作業の安全性向上を図る。
実験の具体的な中身は、東京建物日本橋ビルで点検箇所なども含めて約400カ所に位置情報が埋め込まれたQRコードやNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)タグを設置。管理員が、スマートフォンで両端末を読み取るだけで、点検記録や異常報告などの位置情報が自動的に入力され、遠隔地でも点検や異常報告の結果をリアルタイムに確かめられる環境を構築する。
東京建物では、専用のアプリケーションを点検業務に用いることで、管理員が点検用紙と筆記用具を用いて現場で結果を記録し、その記録をPCに転記するといった従来のワークスタイルを変え、仕事を効率化することを目標としている。
故障や異常発生時の正確な共有、対応の迅速化、記録の蓄積では、設備や施設内の状態を把握するため、IoTセンサーなどを使い、建物内のデータを蓄積し、グラフで可視化することで、設備の状態などを分析することが可能になる。各設備に使用するシステムは、データがしきい値を超えた場合に、メールやSMSで管理者に通知する機能を備えている。
また、ZETA通信を利用したセンサーを日本建物日本橋ビルに約50台を設置し、センサーからのデータを基に、巡回や備品補充の頻度を減らすなど作業の効率化を図れるかも検証する。
東京建物日本橋ビルの3D化表示では、DBMを用いて、建物内に配置された設備の状態や点検結果などの多様な情報を3D化し、東京建物日本橋ビルのモデル上に統合表示して、大型モニターでビル全体の状況を把握する。
これにより管理員は、ビルに対する知識や経験の差に左右されず、問題が発生している場所や状況などを容易に理解できるようになる。DBMでは、クラウド上に情報が蓄積され、遠隔地からでもビルの状態をチェックでき、他拠点に駐在する経験豊富な設備員から遠隔でサポートを受けられる点も踏まえて、ビル管理員の負担軽減やノウハウ共有、処理の迅速化が達成できるかも調べる。
東京建物は、DBMが搭載した各機能における効果の検証後は、対象点検業務の拡大、センサーの追加などによるシステムの高度化と効率化を検討する。
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