東京建物が貸室内の有効面積を保ちつつビルを耐震補強:耐震
制震装置「D3SKY-c」を「東京建物八重洲さくら通りビル」に導入することで、貸室内の有効面積を狭くすることなく、耐震補強工事を実現した。
東京建物は、「東京建物八重洲さくら通りビル」の耐震補強工事で、施設に設置した重りの揺れによって振動を抑制する制震装置「D3SKY-c」を導入し、このほど工事が完了した。設計施工は鹿島建設が担った。
屋上に設けたD3SKY-cで大地震に対して建物全方向の揺れを大幅低減
東京建物八重洲さくら通りビルは、1974年11月に竣工したオフィスビルで、SRC造地上11階/地下2階建て、延べ床面積は5930.43平方メートル。所在地は東京都中央区八重洲1‐5‐20で、敷地面積は626.14平方メートル。
用途は事務所や店舗、駐車場で、アクセスはJR各路線「東京」駅から徒歩3分、東京メトロ「日本橋」駅かた徒歩3分。
東京建物は2018年1月に、八重洲さくら通りビルを取得し、現行の耐震基準を満たす耐震補強や各区画のリニューアル工事について、複数の構法を検討していた。
耐震補強の候補として、貸室内にブレースなどの補強材を設置する案も挙がったが、補強材を用いた工事では、工期が長い上、貸室内の有効面積が狭くなるなどの問題があった。
今回採用した構法は、屋上にD3SKY-cを配置するだけで、耐震性が増すため、建物内部の補強を減らせ、貸室内の有効面積や眺望、採光を阻害せず、入居中テナント企業への影響も最小化できることから導入に至った。
制震工事の概要は、屋上に2400キロニュートンのD3SKY-cを1基配置し、下階の柱や梁(はり)、壁の一部に炭素繊維の補強を行った。
加えて、設計時に地震時の揺れが分かる時刻歴応答解析を用い、炭素繊維で補強する柱や梁(はり)、壁を抽出。工事箇所が絞れたことで、貸室内での工事を最小限にとどめた。
炭素繊維で補強した柱や梁、壁は、改修前と同じ状態に復旧したため、屋内の使い勝手や眺望は変わらなかった。なお、今回の構法を利用した耐震補強計画は日本建築センターから評定を取得している。
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