BASにも活用可能な三菱電機製AIの最新動向、逆強化学習技術で機械が人の動きを模倣:CEATEC 2020
三菱電機は、2017年に効率的なエッジコンピューティングを実現するAI技術「Maisart」を開発した。以降、ビル用マルチエアコン「グランマルチ」の効果的な起動や下水処理場向けの曝気量制御技術で活用している。現在は、Maisartを用いた逆強化学習技術で、スムーズに無人搬送機などの機械が人の操作を模倣できるか検証を進めている。
三菱電機は、オンラインで開催された「CEATEC 2020」(会期:2020年10月20〜23日)に出展し、「AI技術Maisartへの取り組み最前線」と題した講演を行った。会場では、三菱電機 情報技術総合研究所 副所長 三嶋英俊氏が同社が開発したAI技術「Maisart」の動向を説明した。
近年は空調システムや下水処理場向けの制御技術で活用
Maisartは、ビル管理システムにも搭載できるAIで、設備の自動化や予兆検知、最適な制御などに役立つ。
三菱電機の三嶋氏は、「Maisartは、ディープラーニングではアルゴリズムのコンパクト化を実現し、設備機器の取得した教師データをベースに効率的な機械学習とビッグデータの分析をも可能。知識の処理は推論アルゴリズムのスリム化でスムーズに行えるようにしている」と性能を語った。
また、設備にAIを備えたエッジコンピューティングとクラウドにAIを搭載したクラウドコンピューティングの違いについて、「クラウドコンピューティングは、サーバを経由するため、ネットワークの遅延や切断などで推論の処理に時間がかかり、大規模サーバとネットワークの構築も必要になる。さらに、人物の属性情報といった機密性が高いデータをアップロードするためには、サーバ側でセキュリティの対策が求められる。Maisartが可能なエッジコンピューティングは、ネットワークに依存せず、機器の内部で推論処理し、リアルタイムな制御を果たせ、大規模なサーバネットワークも不要で、セキュリティレベルも高い」と続けた。
Maisartを活用した三菱電機の取り組みには、ビル用マルチエアコン「グランマルチ」のAIスマート起動や下水処理場向け曝気(ばっき)量制御技術、逆強化学習技術による作業者との協調制御がある。
グランマルチのAIスマート起動は、空調冷熱総合管理システム「AE-200(Ver.7.9)」にMaisartを搭載し、Maisartが学習した過去の運転データをベースに、複数台のグランマルチを適切な起動時刻で個別に自動設定するもの。空調機器は、起動時に多くの電力を使用するため、AIスマート起動で、各エアコンの起動時刻を分散することで、電気の基本料金を抑えられる。
下水処理場向け曝気(ばっき)量制御技術は、Maisartで下水処理場に配置された生物反応槽の曝気量をコントロールする。具体的には、下水処理に必要な酸化処理を行う生物反応槽への流入水のアンモニア濃度をMaisartで数時間先まで高精度に予測し、各区画の生物反応槽が適切な曝気量となるように個別に制御することで、処理水質を保ちつつ、曝気量を従来比で10%減らし、省エネ性を高める。
逆強化学習技術による作業者との協調制御について、三嶋氏は、「Maisartを利用した逆強化学習は、人間の作業を模倣する学習を可能にするもので、これまでと比較して10%程度の運転操作データでスタッフと同等の作業を機械に行わさせられる。例えば、逆強化学習により、人が操作するフォークリフトに無人搬送車(AGV)が道を譲るなどの動作が可能になると見込んでいる」と解説した。
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