縁切り壁の構築にかかる時間と費用を20%削減可能な新工法、戸田建設:新工法
戸田建設は、これまでの工法と比較して、縁切り壁の構築にかかる時間と費用を20%削減できる「スリムウォール工法」を開発した。今後、実現場の盛土工事に適用するとともに、さらなるコストカットを目指し、打設方法と鋼板接続方法の改良を進める。
戸田建設は、軟弱地盤の盛土工事で発生する周辺地盤の引き込み沈下をローコストで防止できる縁切り壁の工法「スリムウォール工法」を開発したことを2020年11月19日に発表した。
鋼矢板工法とほぼ同等の沈下量抑制が可能
同社は、軟弱地盤における盛土の施工で、周辺地盤の引き込み沈下防止対策として、敷地境界に使用する縁切り壁のコスト縮減と施工時間短縮を目的にスリムウォール工法を開発した。
スリムウォール工法は、親杭を支持層に根入れさせ、親杭間に鋼板を挿入し、固定して内外で地盤の縁を切ることで、沈下の影響を低減させる。戸田建設がスリムウォール工法の性能を数値解析した結果、親杭長の半分に及ぶ深さまで鋼板で仕切ることにより、鋼矢板の全面施工と同等の効果が得られ、約20%のコストと作業時間の縮減を実現することが分かった。
戸田建設は、縁切り壁として親杭と鋼板を用いた壁を設置し、鋼板の取り付け方法の検証や施工時間の確認を行った。また、当該箇所の片側に盛土して、引き込み沈下の抑制効果もチェックした。
実験では、軟弱な粘性土地盤を対象に、スリムウォール工法または鋼矢板工法で作成した縁切り壁を配置した。スリムウォール工法では、長さが14メートルに及ぶ親杭の間隔を1.5メートルピッチにして、鋼板は3メートルのものを2つ連結し、圧入深さを6メートルとした。スリムウォール工法と鋼矢板壁は全てバイブロハンマー圧入で設置したが、圧入枚数と段取り換えが少ないスリムウォール工法は、鋼矢板工法に比べ作業時間を約20%短縮した。
また、スリムウォール工法で施工した箇所と鋼矢板工法を用いた箇所で、層別沈下量と地表面沈下量を3カ月間計測して縁切り壁の効果を比較した結果、スリムウォール工法は、鋼矢板工法とほぼ同等の沈下量抑制が可能なことが判明した。
今回の実証実験では、従来工法と比較して、施工時間とコストを約80%に縮減できることが明らかになった。
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