建設技術者数の「2030年未来予測」で最大5.1万人が不足、ヒューマンタッチ総研が試算:産業動向(2/2 ページ)
ヒューマンタッチ総研は、建設技術者に関する将来の需給動向を予測し、「ベースライン成長」「成長実現」「ゼロ成長」の3つの経済成長パターンで、2030年までの未来予測をシミュレーションした。ベースライン成長シナリオでは、2030年の不足数は2万人となるが、ゼロ成長シナリオでは2027年に不足が解消され、2030年には9千人の過剰となる可能性を示唆している。
■2030年の建設技術者需要数は、「成長実現」シナリオで55万人
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受ける2020年度の建設投資額は、国土交通省の「建設投資見通し」において55兆1000億円(前年度比▲3.8%)の見通しとなっているため、その数値をベースに必要な建設技術者の需要数を算出。
2021年は、リーマンショック時のデータ及び内閣府の「長期の経済財政に関する試算」(2020年7月31日)による2020年度のGDP成長率予測値をベースしている。リーマンショック時には、実質GDP成長率が▲3.6%で、民間非住宅・土木建設投資額は▲15.6%。また、2020年度の実質GDP成長率は▲4.5%と予測されている。これらのデータと緊急事態宣言が再発出されるなど新型コロナウイルス感染症の収束が遅れている状況を踏まえて、2021年度の民間非住宅・土木の建設投資額は、▲20%減少すると仮定して必要な建設技術者数を予測した。
その結果、各シナリオ共通で建設技術者の需要数は、2019年の54万3000人から2020年には52万3000人、2021年には50万5000人に減少することが明らかになった。2022年以降は、成長実現シナリオでは増加傾向が続き、2030年には需要数は55万人となり、ベースラインシナリオでは横ばいで2030年には51万9000人、ゼロ成長シナリオでは減少傾向が続き2030年には49万人になる計算となった(図表4)。
建設技術者数と建設技術者の需要数の試算結果から、需給ギャップの推移をみると各シナリオで次のシミュレーション結果となった。
■ベースライン成長シナリオでは、2030年の不足数は2万人
3つのシナリオともに、建設技術者の不足数は2019年に最大の6万613人の不足となり、その後2020年には3万7193人、2021年には1万5310人と不足数は大幅に減少。
以降は、ベースラインシナリオでは2022年の不足数は2万7040人に増加するが、その後、不足数は徐々に減少して2030年には2万160人の不足になる(図表5)。
■成長実現シナリオでは、2030年の不足数は5万1000人に拡大
成長実現シナリオでは、2022年に不足数は2万7002人に増加し、その後は急速に増加して2030年には5万1394人の不足になる(図表6)。
■ゼロ成長シナリオでは、2027年に建設技術者は過剰に転じる
ゼロ成長シナリオでは2022年に不足数は2万2294人に増加するが、しかしその後は減少傾向が続いて2027年には過剰に転じ、2030年には9299人の余剰が生まれる計算となった(図表7)。
ヒューマンタッチ総研所長 高本和幸氏は、「建設技術者の需給ギャップは2019年に6万人の不足にまで拡大したが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で建設投資が減少する影響を受け、2021年には1万5000人程度の不足にまで需給ギャップは縮小すると試算された。コロナ禍による建設投資額の減少に伴い、建設技術者の需給はかなり緩和されるが、一定レベルの人材不足は続くとみられる」とコメント。
2030年の需給ギャップについては、「ベースライン成長シナリオでは2万人の不足、成長実現シナリオでは5万1000人まで不足数が拡大するが、ゼロ成長シナリオでは2027年に建設技術者は過剰に転じ、2030年には9000人の過剰になるという試算結果となり、経済動向次第で需給ギャップは大幅に変動する見込み。足元では、緊急事態宣言が再び発出され、新型コロナウイルス感染症拡大の収束のめどが立たない状況であり、2020年度のGDP成長率は今回の試算で使った▲4.5%よりもさらに下振れすることも考えられる」。
また、「2020年12月に発表された政府経済見通しでは、2020年度の実質GDP成長率は▲5.2%とされており、緊急事態宣言の再発出により、下振れする危険性もあると想定される。そのため、短期的には縮小マーケットを想定しながらも、中長期的には建設市場の動向次第で建設技術者の不足数が拡大する可能性も踏まえ、採用戦略をフレキシブルに見直していくことが重要になる」と指摘する。
【訂正】初出時、図表7に誤りがありました。上記記事は差し替え済みです(2021年3月19日11時50分)
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