伸び悩む工務店でデジタルシフトが必須な理由、コロナで変わった工務店選びの現状:第5回 住宅・ビル・施設 Week(1/2 ページ)
SOUSEI Technologyは、このほどマイホームアプリ「knot」の導入ビルダー数が800社を超えたことを発表した。採用社数の拡大と売り上げが伸び悩む工務店を対象に、デジタルシフトを後押しするため、knotを展示会などでPRしている。
SOUSEI Technology 代表取締役 CEO 乃村一政氏は、住宅、ビル、商業・公共施設など、あらゆる建築物を対象とした建築総合展「第5回 住宅・ビル・施設 Week」(会期:2020年12月2〜4日、東京ビッグサイト)内の「第2回 工務店支援 EXPO」で、「飛躍する工務店のデジタルシフト 〜デジタルで生み出す新しい顧客体験〜」と題したセミナーを行った。講演では、住宅ビルダー業界の動向や効果的な集客方法やITツールの活用方法について解説した。
住宅業界に10年に一度のチャンス
乃村氏は、2010年7月に奈良県でITに特化した注文住宅ビルダーSOUSEIを立ち上げ、2017年4月27日にはマイホームアプリ「knot」をリリースした。その後、SOUSEIのIT事業部をSOUSEI Technologyとして2018年8月に分社化し、knotの展開を本格的に乗り出した。
knotは、注文住宅の情報を場所と時間を選ばず管理可能なハウスオーナー向けのサービスで、住宅ビルダーは工務店向けのknotを導入することで、専用アプリを通じて顧客とチャットが行える他、施工を進める家の写真や書類などを共有できる。
セミナー冒頭、乃村氏は「住宅業界に10年に一度のチャンスが到来した。その理由は、新型コロナウイルス感染症の拡大によるユーザーの行動変化を踏まえて、事業展開を行えるビルダーが今後急激に伸長することが予想できるからで、2020〜2030年の間に各県のビルダーランキングは激変するだろう。実は2019年〜2020年の1年で、47都道府県のうち、トップのビルダーが入れ替わった県が14県あり、ビルダー探しにおける顧客の変化に乗り遅れるとすぐに、売上が下がる傾向がある」と現状に触れた。
将来的に売上を伸ばすビルダーについて、乃村氏は、「リアルの店舗や看板などではなく、例えばアパレルで言えばZOZOTOWNのようなWebをうまく活用する企業がキーになると見込んでいる。なぜならば近年は、若年層の顧客がスマートフォンでしか家を探さないからだ」と次世代におけるビルダーの営業スタイルを示した。
また、コロナ禍での工務店の接客について、「ビルダー業界は、見込み客や育成など工務店目線の言葉を使いがちだが、コロナ禍では、営業担当者がマインドを切り替え、“家を作っているビルダーと、家に興味のある利用者”という対等な関係を意識したホームページ(HP)や動画と画像のコンテンツを作らなければならない。つまり、顧客を必要以上に過剰な表現が多いHPは、Web上で閲覧した際に不快と感じることが多いので、シンプルにフラットな情報を投げかける情報発信が望ましい」とデジタルコンテンツを作成する上で注意すべきポイントを語った。
ビルダーが顧客の体験価値を上げる方法については、来店、接客、打ち合わせ、住宅の引き渡し、アフターサービスがあり、顧客とのやりとりが可能なknotを使用して、資料や議事録、現場写真、契約書などを共有するとともに、チャット機能でコミュニケーションを直接とることが有効だとした。
乃村氏は、「昨今の顧客は、あらゆる情報がSNSなどにも開示され、スマートフォンで見られるようにしなければ、ストレスを感じる傾向があるため、knotが有用だと思っている。具体的には、従来のビルダーは、契約書、図面、取り扱い説明書、保証書などを紙ベースの資料で施主に渡しているため、デジタルデータの検索が難しいことが顧客の心的負荷になっている」と説明した。
続けて、新型コロナウイルス感染症の拡大前と後での顧客の工務店選びと住宅発注までの流れについて、「拡大前は、顧客がSNSなどで工務店を認知し、HPに訪れて物件の資料を請求して、資料がメールもしくは郵送で届いた後、工務店に来店し、担当者が顧客の要望を聞き、2回目の来店でニーズに合った住宅を提案して、3回目の来店で受注するケースが多かった。顧客は、2回目の来店で、住宅を発注する工務店を決めるプレ意思決定を行っていた。新型コロナウイルス感染症の拡大後では、顧客が、来店前の情報収集に重きを置くようになり、プレ意思決定が来店前と前倒しになった。要するに、Web上でのやりとりや情報を基に住宅を注文する顧客が増えた」と指摘した。
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