大林組がコロナ感染症患者の受け入れが可能な仮設緊急病棟を開発:製品動向
大林組は、新型コロナウイルスに感染した患者の受け入れに対応できる仮設緊急病棟「PEC II」を開発した。
大林組は、2008年に開発した仮設緊急病棟「新型インフルエンザ対応緊急病棟 パンデミックエマージェンシーセンター(PEC))」を改良し、新型コロナウイルス感染患者向けの新タイプを開発して、PECシリーズに追加したことを2020年9月29日に公表した。
新型コロナウイルスの中等症患者収容を想定した仕様
大林組は、2008年に新型インフルエンザの流行に伴う医療病床の不足に対応するため、短期間で設置が可能な仮設緊急病棟として「PEC original」ならびに屋外での診察を想定した「PEC発熱外来」を開発。PEC originalは、隔離が最優先されるウイルス患者に対処することを目的とし、面会廊下を設けるなど面会者や医療スタッフの交差感染の防止に配慮した。
今回、大林組が医療機関や医薬品施設、バイオクリーンルームなどの物件を設計・施工することで培ってきた知見とノウハウを活用し、新型コロナウイルスの中等症患者に対応した仮設緊急病棟「PEC II」と重症患者向けの「PEC/ICU」を開発した。さらに、PEC originalと同じ平面図ながら部材を既製品にすることで、より短工期での設置を可能とした「PEC quick」をPECシリーズに加えた。
PEC IIは、酸素吸入が必須であり人工呼吸器の装着もありうる新型コロナウイルスに感染した中等症患者の収容を想定し、医療ガスの酸素と空気をセントラル配管で供給する仕様になっている。基本プランでは病床数を30床としているが、病床数の増減が可能。
PEC/ICUは、重症患者の治療に対応できるように、人工呼吸器や人工心肺装置(ECMO)の装着を前提とし、ICU(集中治療室)の施設基準である1床当たりの専有面積を20平方メートルとしている。
また、PEC/ICUの床は、ECMOなど重量機器の設置に応じられるように、アイソレーション回路付きの電源設備や医療ガスのセントラル配管を搭載している。加えて、通常ICUは、空気圧を陽圧とし排気を促すが、PEC/ICUでは菌の排出を防ぐため、ほかのPECシリーズと同様に陰圧としており、患者やスタッフ、資材の搬出入動線を独立させることで、関係者の安全を確保している。
PECシリーズは、全てが約500平方メートルのプレハブユニットをベースとしているため、医療機関ごとに異なるニーズに合わせた組み合わせや、患者の増加に伴う増築にも対応可能。内部間仕切りもアレンジができ、建築や設備の仕様によって設計を変えられる。
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