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住友林業が「W350計画」で目指す“環境木化都市”と実現に必要な木化技術とは?高さ350mの木造超高層ビルの構想(2/3 ページ)

住友林業が展開するビジネスの根源には、植林・育林の技術にある。同社が掲げる「W350計画」は、この技術をさらに前進させ、“環境木化都市”の実現を目指す研究開発構想だ。気候変動の抑制に向けた建築時の総排出CO2「エンボディド・カーボン」の減少を目標とし、同社では「MOCCA(木化)」事業を進めている。MOCCAでは、木材を使って耐久性が高く快適な建築空間を実現すべく、耐火部材の開発やゲノム選抜育種などに取り組んでいる。

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千代田区丸の内に建築する想定で地震シミュレーション

 安全性の確認には、地盤が弱いとされる関東地盤の地震周期も考慮し、東京・千代田区丸の内に建築する想定でのシミュレーションも試した。結果、相模トラフを震源とするマグニチュード8クラスの大地震でも、建物が倒壊しない安全性を確認した。


丸の内での建設を想定した地震固有値解析を実施。木を用いても、マグニチュード8で倒壊しないビルが作れることが証明された

 このビルの場合、使われる木材の量は約18万5000立方メートルにも上る。これは住友林業が1年間に供給する新築の木造住宅8000棟の構造部分に使われる木材に相当し、約14万トンのCO2が固定できる計算となる。また、このCO2の排出量は、ビルを従来のように鉄骨で作った場合と比較すると、約9万トンも抑えられる。


従来型のビルに比べ、木造ビルは建設時のCO2排出量が13%少ない

 中嶋氏は、維持管理や解体までを含めた建物のライフサイクル全体でのCO2排出量でも、木造ビルは優位にあると強調する。W350計画は、公式発表から2年が経過するが、その間、さらに鉄骨量を減らすべく構造関係の検討を進めてきたという。

W350の実現へ向け、要素技術を盛り込んだ新研究棟を建設

 住友林業では、W350計画の実現に向け、その基礎となる技術を投入した新研究棟を新設した。中嶋氏は「新研究棟を拠点に、木の価値を高める研究をより進めていく」と語る。


つくば市に建設した住友林業の新研究棟。W350計画に向けた要素技術が多数投入されている

 新研究棟には、部材と部材の結合を強固にする「ポストテンション技術」が使われている。ポストテンション技術は、木材の内部に鋼棒を通し、上下からテンションを掛けるもの。こうすることで結合部の剛性を高められ、地震などで傾いても元の状態に戻るような作用が働く。

 ちなみにアンカーボルトは交換でき、鋼棒にテンションを掛け直すことで建物の修復も可能になる。中嶋氏は、ポストテンション技術のこのような特徴を「BCPを考えたときに、このような技術が生きてくるのではないか」とした。


部材の結合を強固にするポストテンション技術。木材の内部に鋼棒を通し上下にテンションを掛けることで接合部の剛性を高める

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