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オランダのFM学科が行うインターンシップ、企業の課題を学生が解決欧州FM見聞録(7)(3/3 ページ)

本連載では、ファシリティマネジメント(FM)で感動を与えることを意味する造語「ファシリテイメント」をモットーに掲げるファシリテイメント研究所 代表取締役マネージングダイレクターの熊谷比斗史氏が、ヨーロッパのFM先進国で行われている施策や教育方法などを体験記の形式で振り返る。最終回は、オランダの大学「University of Applied Science(UAS)」にあるFM学科のインターンシップ制度について解説する。

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インターンシップの学生が社員の成長に影響

 実は、2008年ころから、筆者の卒業したSaxion University of Applied Scienceを中心に、オランダに点在しているUASのFM学科に在籍する学生をインターンシップで日本の企業が受け入れている。多くは外資系の日本法人だが、日系も数社は既に、延べ20人近くの学生を受け入れ、ほぼ満足したと認識している。

 日本の場合は、英語などの語学が最も大きな障害になるが、オランダ人の明るくオープンな性格も相まって、言葉の壁はインターンシップの学生が積極的に日本人に話しかけることで乗り越えている。なかには手動のエスプレッソマシンを持ち歩き、社員にコーヒーを振る舞いながら会話をしようとする強者もいるほどである。インターンシップの学生は、日本の年長者には父性と母性に働きかけ、英語を話せなかった人には、「面倒をみてあげたい。英語を勉強しよう」などの思いを芽生えさせ、若い世代の社員には、ライバルまたは友人として強い刺激を与え積極性を醸成するなど、受け入れ先への貢献は多大である。

 前述のような彼らがこなす実務的な課題解決も、満足以上の影響を与えている。インターンシップの学生は、異文化の日本での生活も含めて、良好な経験をしたという実感を持って帰国しており、オランダのFM教育は日本でも十分に通用することを物語っている。

 これまで7回にわたり、筆者が見聞・経験した欧州のFMについて変遷やIT、教育について記してきた。それぞれの回で読者の方々がさまざまなヒントを見つけていれば幸いだ。

 一貫して申し上げたいのは、FMはユーザーのためのサービスであり、それをファシリティマネジャーが、常に新しいワークスタイルやITツールを取り入れてクオリティーを高めているということである。連載を参考にして、FMという複雑で分かりにくい仕事を進めていくための方向性を少しでも理解してもらえればありがたく思う。

著者Profile

熊谷 比斗史/Hitoshi Kumagai

ファシリテイメント研究所 代表取締役マネージングダイレクター。1986年に富士ゼロックスにソフトウェア開発として入社。1990年に同社のオフィス研究所に異動後は一貫してファシリティマネジメントに携わる。JFMAへの出向やオランダFM大学院、イギリスFMアウトソーシング会社での研修、国内でのFMビジネスを経験する。2007年、イギリス系不動産コンサル会社DTZデベンハム・タイ・レオンに入社。グローバルFM/CREコンサルタントに従事。その後独立し、2012年にファシリテイメント研究所を設立し、今日に至る。ユーザーのイクスピリエンス(感動体験)を創るホスピタリティFMを目指し、CREやワークプレースプロジェクト、FM管理業務からFMのIT分野まで幅広くコンサルティングを提供する。

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