清水建設の潮見イノベーションセンターが起工、500億円を投じ“渋沢栄一”の邸宅移築など:プロジェクト
清水建設が長期ビジョンで示す2030年の企業像「スマートイノベーションカンパニー」を実現するためのオープンイノベーション拠点「潮見イノベーションセンター」が着工した。センターの敷地内には、同社と縁(ゆかり)のある明冶・大正期に活躍した大実業家・渋沢栄一氏の邸宅も移築する。
清水建設が東京都江東区潮見2丁目で、建設を予定している「潮見イノベーションセンター」が起工した。先立つこと2020年10月23日には、同社の関係者列席のもと現地で地鎮祭が執り行われた。
イノベーションセンターは、本館をはじめ、研究・研修施設、歴史資料の展示施設、旧渋沢邸の5棟から成る総延べ床面積約2万5000平方メートルの施設群で、総投資額は約500億円を見込む。
旧渋沢邸、30年振りに青森六戸町から江東区へ帰郷
起工の第1弾は、2020年11月2日に着手する旧渋沢邸の再築工事。旧渋沢邸は、明治から大正にかけて清水建設の相談役を務めた渋沢栄一氏の邸宅で、同社2代目の清水喜助氏が手掛け、1878(明治11)年に完成した木造建築を母屋とし、その後、洋館などの増築を経て現在の姿に至ったという。母屋主要部(表座敷)は、ほぼ当時の姿で現存し、完成から140年以上が経過した現在でも、建築的特徴や細部に用いられた意匠及び工法が状態よく保存されていた。建物の構造・規模は、木造2階建て、建築面積は921平方メートル、延べ床面積は1204平方メートル。
当初の建設地は、深川福住町(現在の江東区永代)だったが、2度の移転を経て、1991年から青森県上北郡六戸(ろくのへ)町で保存されていたものを清水建設が譲り受け、イノベーションセンターの敷地内に移築。2019年2月には、解体・収去工事に着手し、専門家による調査を行いながら、部材を手作業で丁寧に解体した。同年11月には解体が完了し、収去した2万点を超える部材は、東京都江東区木場の東京木工場などで保管し、現在、補修・修繕を行っている。
再築工事では、旧渋沢邸が有する文化財的価値を維持・継承することを基本方針とし、オリジナルの意匠を損なわないよう、収去部材を用いて精緻な復元を目指す。工事期間は2年4カ月間を予定し、2023年には、本格的な和風建築と洋風建築とを巧みに調和させた近代住宅史の貴重な建物が往時の姿で蘇(よみがえ)ることになる。
一方で、研究施設や研修施設などの新築建物は、引き続き設計作業を進め、2023年のオープンを目指し、2021年春に着工する。竣工後は、潮見イノベーションセンターをオープンイノベーションの拠点として活用し、革新的な生産技術の開発や事業の多様化、次世代を担う人財の育成を進めていく。
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