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【BAS徹底解剖】BAS/BEMSの「快適性、生産性への貢献」アズビルが解き明かす「BAS」解体新書!(5)(1/3 ページ)

建物には、空調、照明、監視カメラなど、さまざまな設備機器が導入されている。それらを効果的に運用するシステムとして、ビルディングオートメーションシステム(Building Automation System、BAS)が存在する。本連載では、制御・計測機器メーカーで各種ビル設備サービスを展開するアズビルが、「建物の頭脳」ともいえるBASやシステムを活用したエネルギー管理システム「BEMS」を紹介し、今後の可能性についても解説する。第5回目は、快適性と知的生産性の関係、BASが目指す快適なオフィス空間について提示する。

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 本連載では、第1回でBASを中心にBEMSも含めたビルシステムの全体像について、第2回でBEMSのクラウド化について、第3回でBASが建物利用者に提供する安心・安全、利便性について、第4回でBEMSデータを活用したエネルギーマネジメントについて紹介しました。

 連載の最終回となる第5回の本稿では、BAS/BEMSの「快適性、生産性への貢献」をテーマに、快適性と知的生産性の関係やBASが目指す快適なオフィス空間について解説していく。

オフィスに快適性が求められる理由

 オフィスの快適性は、オフィスワーカーの知的生産性に影響を及ぼす要因として広く知られています。室内温度の上昇に伴って作業効率の低下が見られたといった報告や、環境満足度が高いほど作業成績が高く疲労が少なかったという報告があり、オフィス環境への不満が生産性を低下させることは、“神経行動学”の分野でも示されています。

 ある実験では、コールセンターを対象に134日間/1万3169件の通話データを収集して、室内温度変化と通話応答率の関係を調査しました。その結果、室内温度を1度上昇させると、1時間あたりの通話応答率が約0.15低下することが確認されました。とくに室内温度が25.0度から26.0度に上昇すると、パフォーマンスが1.9%低下することが判明しました※1。この25.0度から26.0度という温度は、一般的にコンフォートゾーンとされますが、それでも微妙な温度の違いによって人間の生産性は影響を受けることが分かります。

※1 Tanabe, S. et al.: The effect of indoor thermal environment on productivity by a year-long survey of a call centre, Intelligent Buildings International 1(3):184-194,2009

 オフィス空間の快適性は、空調条件だけでなく採光、レイアウトデザイン、音、香りなどいくつもの要因に左右されるものですが、ここでは人間が感じる温冷感によってもたらされる快適性について掘り下げていきたいと思います。


出典:Adobe Stock

快適度を表す指標

 人間が感じる温冷感快適度というものは、室内温度によってのみ決まるものではなく、多種多様な要因に影響されます。この温冷感快適度を定量的に表す指標については古くから研究されてきましたが、よく知られている指標の一つに予測平均温冷感申告(Predicted Mean Vote:PMV)があります。

 PMVは、デンマーク工科大学のオレ・ファンガー博士によって考案されたもので、温熱快適性指標として国際標準ISO7730に定められています※2。PMVは温度、湿度、風量、放射温度、活動量、着衣量の6つの要素から求められ、+3(非常に暑い)〜0(快適)〜-3(非常に寒い)の範囲で、温冷感を数値化し表現するものです。

※2 ISO7730,Ergonomics of the Thermal Environment ?Analytical Determination and Interpretation of Thermal Comfort Using Calculation of the PMV and PPD Indices and Local Thermal Comfort Criteria,3rd ed.,2005.


PMVの構成要素と温冷感の対応表 出典:アズビル

 しかしPMVは、1300人以上の被験者実験から導かれた平均的な感じ方を表す指標のため、実際のオフィスで働く人たちの感じ方と必ずしも一致するものではありません。そのため、PMVでは快適と評価される環境であっても、実際の居住者の「暑い」「寒い」という感じ方は平均的な感じ方と異なるケースも多くなります。「暑い」とか「寒い」という感じ方は人それぞれであり、PMVではそういった個人差を汲(く)み取ることはできません。


温冷感の感じ方の違い 出典:アズビル

 また、PMVを決定する要素として、「着衣量」や「活動量」などこれまでの技術ではセンシングが難しい要素が含まれているため、実用性という観点でも問題がありました。

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