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【BAS徹底解剖】BAS/BEMSの「快適性、生産性への貢献」アズビルが解き明かす「BAS」解体新書!(5)(2/3 ページ)

建物には、空調、照明、監視カメラなど、さまざまな設備機器が導入されている。それらを効果的に運用するシステムとして、ビルディングオートメーションシステム(Building Automation System、BAS)が存在する。本連載では、制御・計測機器メーカーで各種ビル設備サービスを展開するアズビルが、「建物の頭脳」ともいえるBASやシステムを活用したエネルギー管理システム「BEMS」を紹介し、今後の可能性についても解説する。第5回目は、快適性と知的生産性の関係、BASが目指す快適なオフィス空間について提示する。

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AIやIoTによる技術革新

 上記で紹介したPMVは、あくまでも標準的な感じ方を表す指標であり、さらにそれを構成する要素を計測することも困難でした。しかし最近では、AIやIoTなどに代表される技術の進化に伴い、BASの世界も変化してきています。

 例えば、熱分布を測るサーマルカメラの画像をAIで解析することで、人の表面温度からおおよその着衣量を推定し、PMVに近い快適度を算出することも可能です。周辺温度と人体の表面温度との差が大きい状態では放熱しやすくなるため、寒くあるいは涼しく感じるようになり、逆に温度差が小さい状態では放熱しにくくなるため、暑くあるいは暖かく感じることになります。


AIによる熱画像解析 出典:アズビル

 またスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを身に着けることで、心拍や活動量などを計測することも可能です。最近の研究では、人が感じる快適度は室内環境や服装に依存するだけでなく、心理状態にも影響されることが分かってきています。そのため、心拍などの生体情報からストレス状態を把握できれば、個人の温冷感をより正確に推定することができるようになります。

 計測技術の進化に加え、最近では各社独自の温冷感指標を定義しようとする動きが活発になってきています。これまで「暑い」や「寒い」といった意思を伝えるには、壁面に取り付けられた設定器の温度を変更する必要があり、設定操作の煩雑さから特定の人間しか操作しない、ということがよくありました。そのために空調の設定温度は、実際の居住者一人一人の意思を反映するものではありませんでした。

 そこで、社員証用ネックストラップに収納可能なカード型のユーザーインタフェースを配布することで、居住者それぞれが周囲に遠慮することなく、自身の感覚を申告できるようにする取り組みも検討されています。


温冷感申告用カード型ユーザーインタフェース 出典:アズビル

 このようにして集められた申告データと、詳細に計測された個人の属性データを解析することで、実際の居住者の感覚により近い温冷感を推定することも可能になるかと思います。今までのように温度を制御するという流れから、今後は人間の感じ方を制御するという方向へ変化していくことが予想されます。

BASが目指すパーソナルなオフィス空調

 計測技術の進化と合わせて、できるだけきめ細かな空調を提供するための制御技術も進化してきています。

 通常、オフィス空調はフロア単位またはゾーン単位で温度を設定する構造になっているため、個人の温冷感に合わせて快適性を提供することは実質的に困難でした。しかし最近では、大空間を細かな単位(セル)で分割し、風量と風向を切り替えるなど、大空間でもできる限り個人の好みに合わせて空調できるような仕組みが考案されています。


セル単位での空調制御イメージ 出典:アズビル

 細かなセル単位ごとに風量を調節し、さらに吹き出し口では天井に沿って広がる拡散気流と斜め下方向に広がる斜め気流を切り替えます。これにより、環境に対する満足度が高い際は、風を感じにくい穏やかな環境を維持し、一時的に暑さを感じている場合には、ソフトな風を直接当てることで、冷房の体感を高めたりすることが可能になります。


吹き出し口の気流の違い 左:拡散気流 右:斜め気流 出典:アズビル

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