ドローン開発を加速させる「福島ロボットテストフィールド」の有用性を訴求、田中前復興相:Japan Drone2020(2/2 ページ)
国際的なドローン展示会「Japan Drone2020」で、田中和徳前復興大臣が登壇し、2020年10月22日に開所したドローン・ロボットのオープンな実験場「福島ロボットテストフィールド」の存在意義について有用性を説いた。
ドローンとロボット分野における一大研究開発拠点「福島RTF」
福島ロボットテストフィールド(RTF)は、2011年東日本大震災に伴う原発災害で失われた福島の産業回復を目指す、「福島イノベーションコースト構想」を具現化した施設と見なされている。
福島イノベーションコースト構想では、廃炉、ロボット、エネルギー、農林水産、医療、航空宇宙の6つが重点分野。福島ロボットテストフィールドでは、このうちドローンやロボット分野を担う。田中氏は、「福島ロボットテストフィールドが利活用されて、浜通り地域の産業集積や人材育成が促進され、交流人口が拡大して復興が進捗することを期待している」と施設の意義を語った。
福島ロボットテストフィールド内には、無人航空機エリアを配置。緩衝ネット付きの飛行場やインフラ点検試験用の橋梁(きょうりょう)、トンネルが設置されている。
無人航空機エリアは、航空法の制限を受けずに自由な飛行試験が可能な場であるとし、小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会が2020年7月17日に公開した「空の産業革命に向けたロードマップ2020」に基づき、目視外飛行の先行実証を目指している。2017年9月以降、福島ロボットテストフィールドでのドローンやロボットの実証件数は、210件に上る。
産業集積に関しては、現在、研究棟に21社のテナント企業が入居しており、ドローン関連企業は、このうちの5つ。田中氏は、2020年8月末で福島ロボットテストフィールドを退去したドローン企業のテララボが、近隣の工業団地に工場を建設するなど、地域産業の活性化に効果が表れていることを紹介した。
規制緩和と連携強化で、ドローンの開発を加速
先ごろ、国土交通省では、ドローンに関する規制を緩和した。飛行場所に航空監視装置、いわゆるレーダーがあるなどの条件を満たす場合は、ドローンの形状や重さを変えるなど改造を行っても、飛行の許可や承認に関する再申請が不要となるものだ。
福島ロボットテストフィールドには、レーダーが装備されている。田中氏は、航空業界関係者の話として、レーダーが装備されているエリアとしては、空港や自衛隊の基地以外では福島ロボットテストフィールドのみとした。そして、規制緩和を活用できる場として、福島ロボットテストフィールドの魅力が高まることに期待していると語った。
講演の最後、田中氏はJapan Drone2020を通じて、ドローン関係者間の連携強化を要望。「ドローンが普及するためには、規制の整備や研究開発の進展に加え、事業者による新しいビジネスモデルの構築が不可欠だ」と訴求した。そして「近い将来ドローンによる空の産業革命が実現できるように、関係者の相互理解とつながりが深めてもらいたい」と語った。
また、「with/afterコロナ時代こそ、無人のサービスが重要になる」とし、「ドローン分野に多くの期待が集まり、ビジネスのチャンスも生まれるのではないか」と、その可能性を示した。
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