【第4回】なぜ減価償却の減少が、大修繕工事の資金準備を妨げるのか?:建物の大規模修繕工事に対応できない会計学と税法(4)(2/2 ページ)
本連載では、建物の大規模修繕工事で生じる会計学や税法上の問題点やその解決策を千葉商科大学 専任講師 土屋清人氏(租税訴訟学会 常任理事)が分かりやすくレクチャーする。第4回は、減価償却が減少することが、なぜ大規模修繕工事の資金準備を妨げるのかを解説する。
建設会社のCSRは、顧客の期待に配慮することが不可欠
建設会社の社会的責任を考えるとき、ステークホルダーの期待に配慮することが、ISO/SR国内委員会監修の『ISO26000:2010 社会的責任に関する手引』※1に明記されている。建設会社の大切なステークホルダーとは、すなわち顧客であろう。つまり、建設会社は顧客の期待に配慮する必要がある。ステークホルダーの期待とは、ステークホルダーの価値観から発生するものだ。
※1 日本規格協会「ISO26000(社会的責任)」
顧客が建物を事業に使用している場合、大規模修繕工事を実行すると、建設会社が作成した契約書などが原因で、税務申告において不必要な税金を支払うことになることは、幾度も述べてきた。顧客は、基本的に無駄な税金など支払たくないはずだ。そう考えると、建設会社はステークホルダーである顧客に対して社会的責任を果たしていないことになる。
この問題を解決するために建設会社は、何ができるのか?それは、建物の価格構造を変える「価格構造メソッド」によって、顧客の無駄な税金を減少させることだ。この価格構造メソッドについての詳細は、次回に論じることにするが、端的に言えば、価格構造メソッドを使用することで、建物を早期償却することを促進でき、減価償却費の累計額が多くなる。減価償却累計額が増額することは、つまり内部留保が大きくなることを意味する。その内部留保を大規模修繕工事の資金に充当することにより、持続可能な建物の維持が実現する。もちろん、税金を減少させることにも連動する。
持続可能な社会形成には、大規模修繕工事は必要不可欠だ。大規模修繕工事を実施するためには、もし一部除却のスキルがなければ、価格構造メソッドしかないと筆者は考える。さもなければ、建物を購入した顧客がツケを払うことになってしまう。
著者Profile
土屋 清人/Kiyoto Tsuchiya
千葉商科大学 商経学部 専任講師。千葉商科大学大学院 商学研究科 兼担。千葉商科大学会計大学院 兼担。博士(政策研究)。
租税訴訟で納税者の権利を守ることを目的とした、日弁連や東京三会らによって構成される租税訴訟学会では、常任理事を務める。これまでに「企業会計」「税務弘報」といった論文を多数作成しており、「建物の架空資産と工事内訳書との関連性」という論文では日本経営管理協会 協会賞を受賞。
主な著書は、「持続可能な建物価格戦略」(2020/中央経済社)、「建物の一部除却会計論」(2015/中央経済社)、「地震リスク対策 建物の耐震改修・除却法」(2009/共著・中央経済社)など。
★連載バックナンバー:
『建物の大規模修繕工事に対応できない会計学と税法』
■第3回:「大規模修繕工事が建物の迅速な減価償却を難しくする理由」
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