「恵比寿ガーデンプレイスタワー」の耐震補強工事に狭小地対応の鹿島の制震装置が採用:制震
鹿島建設は、制震装置「D3 SKY-L」を「恵比寿ガーデンプレイスタワー」の屋上に導入する耐震補強工事を進めている。D3 SKY-Lが屋上の狭いスペースに設置可能で、施工中も、建物内のオフィスや飲食店は通常通り営業できるといった利点が、恵比寿ガーデンプレイスタワーを運営するサッポロ不動産開発に評価され、今回の採用につながった。
サッポロ不動産開発は、運営する恵比寿ガーデンプレイスタワーの安全性を高めるため、鹿島建設が開発したTMD(Tuned Mass Damper)型制震装置「D3 SKY-L」を屋上に設置する制震工事を2020年9月から開始していることを明かした。
屋上に3基設置で総重量は1350トン
今回の制震工事は、恵比寿ガーデンプレイスタワーの屋上にD3 SKY-Lを3基配置する。3基の総重量は1350トンで、工期は2020年9月〜2022年8月を予定している。設計・施工は鹿島建設が担当する。
D3 SKY-Lの採用経緯には、サッポロ不動産開発と鹿島建設が共同で、地震動に対する制震性能や眺望、施工中のテナントなどに与える影響を最小限に抑制する工法を検討した結果、ヘリポートとして使用されていた屋上の限られたスペースでD3 SKY-Lが効果を発揮すると考えられたことがある。
D3 SKY-Lは、鹿島が開発した多段積層ゴム式の大型TMDで、専用に開発した積層ゴムを用いた3段構成で、装置高さを抑えた仕様になっており、大型地震に対応している。また、1基の重さは450トンのTMDを3基連結させた構成にすることで、省スペース化を図れる。D3 SKY-Lをビルに取り付ける工事中も、建物内のオフィスやレストラン街は通常通り営業できる。
D3 SKY-Lの性能を確かめるために、東日本大震災において都内近傍で観測された地震動に対してシミュレーションを行った結果、建物全方向の揺れを半減し、ビルの入居者が振動を強く感じる時間を低減することが判明した。
恵比寿ガーデンプレイスタワーの概要
恵比寿ガーデンプレイスタワーは S造地下1階/地上40階/塔屋1階建てで、最高高さは166.6メートル。所在地は東京都渋谷区恵比寿4丁目20番3号で、用途は事務所や店舗、駐車場。設計は久米設計で、施工は鹿島建設を代表とする恵比寿ガーデンプレイス建設工事B工区共同企業体。
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