AIで不動産の販売図面を自動読み取り、10時間の作業が最短5秒に:不動産テック
GA technologiesは、不動産情報のデジタル化を推進すべく、AI-OCRによる物件の販売図面を自動読み取り(OCR)するツール「ブッケンSCAN!」の提供を開始した。
PropTech(不動産テック)総合ブランド「RENOSY」の運営を行うGA technologies(GAテクノロジーズ)は、不動産情報のデジタル化を推進すべく、AI-OCRを用いた物件の販売図面の自動読み取り(OCR)ツール「ブッケンSCAN!(ブッケン スキャン)」の提供を2020年8月6日に開始した。
不動産業者と金融機関に向けた業務支援システム
ブッケンSCAN!は、AIが販売図面を自動認識し、約5秒で異なるレイアウト図面を把握し、分析した後、データ化する。自動で読み込んだ販売図面のデータを基盤システムへ反映することで、データ入力の自動化が可能になる。
これまで、不動産取引上で物件の販売図面は、業者間のやりとりに多用される不可欠な情報となっている。業界独特の販売図面は、アナログな形式でやりとりされており、FAXを通じた「紙」での共有が主流となっていた。
また、販売図面にはフォーマットが存在しないため、販売図面ごとに掲載情報やレイアウトにバラツキが生じ、これまで不動産会社や金融機関は、入手した販売図面を目視で確認しながら、自社管理システムへの登録、自社HP、集客ポータルサイトへ掲載するため、毎回手作業で情報を入力していた。一例として、約1万件の掲載物件を扱う不動産仲介会社では、1日平均約200件の販売図面を約10時間かけて手入力しているという。
さらに販売図面は、金融機関でも、住宅ローンの資産担保評価を判断する資料の1つとして、使われている。しかし、多くの金融機関では、住宅ローン申請のたびに販売図面を入手し、物件情報を分析した後、破棄していた。
ブッケンSCAN!は、「物件情報の自動入力で作業効率を改善」を掲げ、販売図面のデータ化を可能にすることで、販売図面のデータベースを構築した。不動産会社によってレイアウトの異なる販売図面でも、独自の技術でデータを分類。販売図面に記載されている「物件名」「価格」「住所」「建築構造」「建築年数」など約20項目を自動で読み取り、約5秒で販売図面の自動読み取りからデータ変換し、販売図面読み取り時間を最大80%削減する。
金融機関では、今後、販売図面をデータとして保存することで、過去の同一物件への融資額・金利・評価を管理することもできるようになるという。
総力特集:
★“Society 5.0”時代のスマートビル―ビルシステムにおけるサイバーセキュリティの現在地
経済産業省が主催する「産業サイバーセキュリティ研究会」のビルサブワーキンググループが、「ビルシステムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン第1版」を2019年6月に公開した。
なぜ今、ビルシステムのセキュリティが重要とされるのか?ビルシステムを取り巻く最新製品・サービスや市場トレンドなどから、現状の課題を浮き彫りにし、次のSociety 5.0時代にあるべきスマートビルの姿を探る。
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