法面や傾斜地を遠隔監視可能な「法面傾斜観測計」、作業員の土砂災害被災を防ぐ:防災
グリーンハウスは、近年法面の構造物工で作業を行うスタッフが、土砂災害の被害に遭うケースが増えていることを踏まえて、遠隔地で地すべりや土石流、がけ崩れの予兆を把握し、被災を防ぐ遠隔監視ソリューション「法面傾斜観測計」を開発した。
グリーンハウスは、IoTマルチセンサーと新無線通信技術を用いて、法面や傾斜地を遠隔監視するソリューション「法面傾斜観測計」を2020年8月に販売した。
多点設置型のセンサーは電源駆動
近年、地球温暖化による水蒸気量の増加などが原因で集中豪雨が頻発し、地震や火山噴火による土砂災害も増加傾向にある。国土交通省が発表したデータによれば、2018年度は、1道2府41県で、1982年度の集計開始以降、過去最多となる3459件の土砂災害が発生した。2018年度に起きた土砂災害の件数は、集計を開始した1982年度から2017年度までの平均発生件数と比べて約3.4倍で、死者・行方不明者は161人にのぼった。
職種別で全体のうち、法面で工事を行う建設業の従業員が多くの割合を占めた。理由の1つには、土砂崩壊のメカニズム自体が複雑で、崩壊規模の事前想定が困難なことがある。加えて、中小規模施工者の場合は、作業員が法面の直下や法面に張り付いて作業し、周囲に注意を払えないため、土砂の崩落時に避難が間に合わないことも要因だとされている。
土砂崩壊の労働災害は、元請けと専門業者の企業イメージ低下や指名停止などで受注機会の喪失をもたらすため、構造物工を扱う企業の多くが災害対策に頭を悩ませている。そこで、グリーンハウスは、掘削工事の法面監視や土石流に対する安全管理体制の整備と省力化を実現するため、LPWAと最新のセンサー機器を用いて、法面の監視と計測データの記録を行う法面傾斜観測計を開発した。
法面傾斜観測計は、多点設置型のセンサーが計測するデータをLPWA(低消費電力広域通信)ネットワークの1つ「LoRaWAN」を介してクラウドにアップロードするため、現場近くに設置した事務所や遠隔地の本社オフィスでPCやスマートフォンにより、Webブラウザで観測が行える。
また、地すべりや土石流、がけ崩れの予兆を把握することも可能で、測定データは、法面の監視だけでなく、日常点検の記録や地山点検簿などにも使える。
センサーが異常を検知すると、あらかじめ登録したメールアドレス宛に通知されるため、従業員が土砂災害の前兆を知ることができる。センサーは、維持管理が容易な構造で、電池駆動のため、山間部などの電源確保が難しい場所でも設置場所を選ばない。
今後は、グリーンハウスは、監視やデータの計測にとどまらずシステム開発会社と連携して他のクラウドシステムに接続するなど機能拡張も予定している。
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