ゼネコン6社が開発した異種強度を打ち分けたRC梁の設計・施工法:新工法
淺沼組らゼネコン6社は共同で、断面上部と下部で強度が異なる鉄筋コンクリート梁の設計・施工方法を確立した。梁の上部とスラブを同じコンクリート強度で一度に打設することが可能で、従来工法で必要だった止め型枠が不要となり、施工の合理化や生産性の向上につながる。
総合建設会社6社(淺沼組、奥村組、熊谷組、五洋建設、鉄建建設、矢作建設工業)は
共同で、「異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート(RC)梁(はり)工法の設計法および施工方法」を開発し、2020年6月に日本ERIの構造性能評価を取得したと公表した。
施工手順の大幅な簡略化が実現
今回、性能評価を取得した工法は、断面の上部と下部で強度が異なるコンクリートを使用する梁の設計及び施工に関するもの。採用することで、現場打ちまたはハーフプレキャスト部材で、梁上部とスラブのコンクリートを同じ強度で打設することが可能になる。
RC造のプレキャスト梁は一般的に、梁の下部をプレキャスト(PCa)化し、梁の上部コンクリートを現場打ちとするケースが多い。梁とスラブのコンクリート強度が異なる場合、従来技術では、梁上部とスラブ上部を打ち分けるために止め型枠を設置し、梁上部のコンクリートを打設。コンクリート硬化後に止め型枠を外して、その後スラブ上部のコンクリートを打設するというステップを踏んでいた。
新工法では、梁の上部とスラブを同じコンクリート強度で一度に打設することが可能となったため、施工手順の止め型枠を設置から外すまでの工程を省くことができ、施工の合理化と生産性の向上が期待される。ただし、柱と梁・スラブのコンクリート強度が異なる場合は、柱梁接合部で従来通りの打ち分けが必要となる。
新工法は、梁プレキャスト工法と現場打設工法のいずれにも適用可能で、片側または両側にスラブが取り付く梁を対象とする。スラブは0.1L0(L0:梁の内法スパン)以上の幅を有し、厚さは梁せいの0.19倍以上で、梁上部のコンクリート高さ(梁下部より低い強度の部分)は、梁せいに対して2分の1以下の高さを条件とする。また、梁上部のコンクリート設計基準強度は、梁下部に対して2分の1以上を確保する。
設計法に関しては、異なる強度のコンクリートが同一梁断面内に存在するため、設計時のコンクリート強度として「等価平均強度」という考え方を導入。この等価平均強度を用いて、許容応力度設計と終局強度設計を行う。等価平均強度は、スラブがあることによる効果と異種強度コンクリートが混在する影響を同時に考慮した強度を指す。これに基づいて算定された梁のせん断終局強度(塑性理論式、荒川mean式)が、自社データと先行他社データによって安全面で評価できることを既に確認しており、設計指針に取りまとめている。
今後は、共同研究した6社で、設計・施工のRC造の建物に採用していくとしている。
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