西松建設が67haのメガソーラー建設地にWi-Fi環境を構築、24時間の現場管理を実現:導入事例
西松建設は、無線通信ベンチャーのPicoCELAと共同で、土木工事の際に必要な通信環境と建設現場を監視するため、カメラシステムの導入を目的に、山岳地にある広大なメガソーラー建設地にWi-Fi環境を整備した。
西松建設は、PicoCELA(ピコセラ)製の屋外向けWi-Fiアクセスポイントと指向性アンテナを採用して、67ヘクタールの大規模な太陽光発電の建設地に、広大なWi-Fi環境を構築した。
リアルタイムの現場確認や緊急時の状況把握で、省人化を実現
建設地は、東京ドームで約13個分の67ヘクタールという広大な面積に加え、山地で崖を削り出し、谷を埋めるような過酷な環境のため、現場管理職員の見回りだけでも何時間も時間がかかり、緊急時にはリアルタイムで現場の状況を把握することが難しかった。
そのため、建設現場に監視カメラシステムを導入することで、見回り時間と人員の省人化及びリアルタイムの監視体制を構築することが求められていた。
しかし、山岳地である現場内は、電源の確保がそもそも難しく、また既存携帯キャリアの基地局もつながっておらず、安定した通信を行うことは困難を極めた。
今回、PicoCELAの建設土木・防災向け屋外無線LAN「PCWL-0410」と、長距離通信を確保できる新型の指向性アンテナ、電源供給用に単機のソーラー発電と蓄電池を組み合わせることで、通信インフラを整えた。広大な敷地内に、PCWL-0410を11台と、指向性アンテナを10台設置して、最大2キロの距離をバックホール通信(無線基地局とインターネット回線を結ぶネットワーク通信)で接続。LAN配線は2カ所のみで済み、PCWL-0410及び専用監視システムの電気は、ソーラー発電と蓄電池のシステム(NETIS:KTK-170013-A)で供給した。
PCWL-0410は、大規模なLANケーブル配線の敷設が難しく、雨風や粉塵(ふんじん)にさらされる屋外の過酷な環境での無線LAN環境の構築を可能にするWi-Fiアクセスポイント。LANケーブルの配線を極限までカットし、低コストで場所を選ばず、無線LAN環境を構築でき、これまでにも工事現場や製造現場、災害発生時など、一時的かつ迅速さが求められる現場で導入されてきた。
また、指向性アンテナは、左右15度に絞った方射角で信号を送受信する。標準的な無指向性アンテナは、アクセスポイント間の距離が100メートル程度しかないが、このアンテナに付け替えれば、最大2キロの長距離間で安定した通信が可能になる。
今回のWi-Fi導入によって、現場見回りの省人化と低コスト化、24時間の現場管理が実現した。なお、西松建設が採用している監視カメラシステムは、Genetecの「Security Center」で、スマートフォンの位置情報と連携しているため、誰がどこにいるのかを監督者が事務所のモニターで把握することができる。専用監視システムは、モニターのマップ上をタッチすれば、各現場の様子をリアルタイムに同時に映し出す。監視カメラが撮影する方向は、画面上で指をスライドさせるだけで動かせる。
このシステムでも、公衆回線を使う場合は、ネットワークのトラフィックに負荷が掛かる懸念から、映像のクオリティをあえて落としていたが、今回のプロジェクトで安定的なWi-Fi通信が使えるようになったことにより、高解像度の映像で細部まで常時モニタリングする監視体制が構築できたという。
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