革新的河川技術プロジェクト第3弾「簡易型河川監視カメラ」の開発完了、2020年度末までに3700カ所に設置
国土交通省が、革新的河川技術プロジェクトの第3弾として、民間企業などと検証を進めてきた「簡易型河川監視カメラ」の開発が完了し、現場への実装段階に入った。各地方整備局などで順次、現場での実装を進めていく。
国土交通省の革新的河川技術プロジェクト第3弾「簡易型河川監視カメラ」の開発は、現場実証が完了し、実装段階のフェーズに入る。今後は、「水防災意識社会の再構築に向けた緊急行動計画」に基づき、2020年度末までに「簡易型河川監視カメラ」を約3700カ所に設置し、河川近隣の住民に画像情報を提供していく。
参加19チームが埼玉と北海道の会場で性能をテスト
技術公募の目的は、機能を限定して低コスト化を図ることで、大規模河川だけでなく、中小河川にも普及を促進するとともに、監視カメラで多くの画像情報を取得し、住民に提供して適切な避難判断を促すことがあった。背景には、2018年7月の豪雨災害で、「避難を呼びかけたが避難に結びついていない」「各種の警告情報が流れる中、どのタイミングで逃げればよいのか分からない」などの意見があった一方、「川沿いに設置した監視カメラの映像を見て避難につながった」との事例があり、「住民に切迫感を伝えるために何ができるか」が課題となっていた。
そのため、国交省では、氾濫の危険性が高く、人家や重要施設のある箇所に「簡易型河川監視カメラ」を設置し、河川状況を確認することで、従来の水位情報に加え、リアリティーのある洪水状況を画像として住民と共有し、適切な避難の判断を可能にする技術確立を目指した。
募集時のリクワイヤメントでは、無線式/有線式のどちらでも屋外に容易に設置できるシステムであることと、機能を限定し、本体価格は1台およそ無線式で30万円以下、有線式で10万円以下を設定。画質はHD画質(1280×720画素)以上、夜間の月明かり程度(最低被写体照度0.5ルクス)でも撮影可能なことが求められていた。また、無線式は太陽電池などで稼働し、一定間隔で静止画像をLTE通信などの無線通信で伝送することも条件の一つだった。
開発に参加したのは、19チーム29者。埼玉会場(大利根防災ST)と北海道会場(北広島防災ST)の実験場所で、昼/夜/雨天の3つの条件下で行った。今後は、現場実証を踏まえ、3700箇所の現場に順次実装していくという。
なお、革新的河川技術プロジェクトは、第1弾で「クラウド型・メンテナンスフリー水位計」、第2弾で「寒冷地に対応した危機管理型水位計」の試験が完了し、現在は、第4弾として「流量観測機器」の開発が進められている。
第3弾プロジェクトの参加チーム/企業グループは次の通り。
▽CIM解決研究会▽シーティーエス▽日立国際電気、mtes Neural Networks、トッパン・フォームズ▽西尾レントオール▽サイバーリンクス▽みどり工学研究所▽建設技術研究所、エースプロモーション共同提案グループ▽パシフィックコンサルタンツ、クレアリンクテクノロジー、アラソフトウエア、情報通信研究機構▽五大開発、情報システム総合研究所合同チーム▽三菱電機エンジニアリング▽イートラスト▽OKI▽三井共同建設コンサルタント、MI▽TOA▽キクカワタクト、クリューシステムズ▽坂田電機▽日本工営▽東芝インフラシステムズ▽ソフトバンク、ハイテクインター、東芝インフラシステムズ
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