ゼネコンは“鹿島のみ”が増収増益、第1四半期決算から見る建設市況:業界動向(3/3 ページ)
ヒューマンタッチ総研は、2021年3月期第1四半期決算のまとめと今後の市場予測を公表した。レポートでは、総合工事業と管工事業で厳しい決算となった一方、土木工事業は比較的好調な決算となったとしている。
プラント業は7社が減収、4社が減収減益、通期は利益面で厳しい予想
プラント・エンジニアリング業の売上高は、7社が前年同期を下回り、うち4社が減収・純減益となっている(図表11)。10社合計の売上高は前年同期比8.9%減、営業利益は同26.1%減、経常利益は同14.8%減、純利益は同21.6%減で、厳しい決算。
今期は、5社が増収と予想をしているが、純利益は7社が減益と見ており、利益面では苦戦する可能性が高い。
ヒューマンタッチ総研所長の高本和幸氏は、「2021年3月期第1四半期の決算を見ると、総合工事業と管工事業で非常に厳しい結果となったが、土木工事業は比較的好調な決算となっているところが注目される」と説明。
一方で、「総合工事業や管工事業は、東京オリンピック・パラリンピック関連の特需も終わり、需要の端境期を迎えていることから、今期の業績予想も大幅な減収減益とする企業が多く、厳しい経営環境が続くと思われる。逆に土木工事業は、売上の主力が公共工事であり、社会インフラの老朽化や多発する自然災害への対策が必須なことを背景に、政府建設投資は堅調に推移すると予想されることから、経営環境は比較的良好に推移するのではないか」と分析している。
市場全体については、「2020年6月の手持ち工事高は30兆7732億円(前年同月比2.5%増)と高水準を維持している。新型コロナウイルス感染症拡大の影響も現状では限定的で、建設業全体は豊富な手持ち工事高を背景に、短期的にはそれほど大きく落ち込まないと予測している。ただし、今後、新型コロナウイルス感染症拡大が長期化して、さまざまな産業の建設投資が低迷することや財政状況の逼迫(ひっぱく)から、政府の建設投資が削減される可能性もあり、中長期的には予断を許さない状況にある」としている。
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