トンネル工事の水中ポンプを無人監視可能な「Newt」、異常時は警報メールで通知:山岳トンネル工事
西松建設は、水中ポンプの稼働状況を無人で監視するシステム「Newt」を開発した。新システムは、常時水中ポンプの消費電力量データをクラウド上にアップロードし、一定時間、データが確認されない時は水中ポンプの稼働停止と自動で判断して、坑内に設置した警報パトライトが点灯。警報メール送信で、関係者へ異常・危険も知らせるため、トンネル坑内の水没事故などが未然に防げる。
西松建設は、東京工業高等専門学校の水戸慎一郎氏の研究室と泰興物産が開発した無給電・無線電力センサーを活用し、水中ポンプの稼働状況を無人で監視するシステム「Newt」を開発した。
自己発電で電源は不要
山岳トンネル掘削時にトンネル坑内で発生する湧水は、トンネル最先端部(切羽)の水中ポンプと排水管で坑外に排水し、濁水処理設備で処理して放水する。しかし、長距離トンネルの斜坑(しゃこう)交点部や下り勾配の切羽で、水中ポンプの稼働が停止すると、トンネル坑内の重機や設備が水没し、坑内路盤を痛めるなど重大な損害が発生していた。
水中ポンプの稼働停止による被害を防ぐため、トンネル内の工事現場では、長期間休工する週末や大型連休中でも水中ポンプの状況を確認する人員を配置している。だが、業界では人手不足によって、休日に人員を確保することが難しくなっているため、水中ポンプの駆動を無人監視できるシステムの登場が業界では期待されていた。
そこで、西松建設では水中ポンプの無人監視システムNewtを開発した。Newtのワークフローは、まず無給電・無線電力センサー「C3-lessセンサー」を用いて、常に水中ポンプの電流値を測定し、計測したデータをゲートウェイを介して、5秒ごとに西松建設専用のクラウドサーバ「Nishimatsu Senser CLOUD」にアップロードする。Nishimatsu Senser CLOUDに格納したデータは、インターネット環境があれば場所を選ばず確かめられる。
水中ポンプの電流値を測ったデータをNishimatsu Senser CLOUDに収める時、しきい値の超過を検出するか、水中ポンプが異常により停止してデータがある指定した時間に送信されない場合、現場のパトライトが点灯する。加えて、関係者に警報メールがプッシュ方式で送られるため、水中ポンプの無人監視が可能になる。
新システムの設置方法は、ゲートウェイを現場内のインターネット回線もしくはLTE回線に接続し、C3-lessセンサーを分電盤内の電線を挟みこむように後から配置するだけで、すぐに監視が始められる。使用する監視センサーは、電線に流れる電流の漏れ磁束により自己発電するため電池は内蔵されておらず、電線に電流が流れる限り継続的に対象のモニタリングが行える。
また、新システムは、水中ポンプ以外にも多様な設備の電流値計測が容易になるため、西松建設開発の「N-TEMS(西松トンネルエネルギーマネジメントシステム)」と連携して、精微な消費電力の管理を進められ、現場の消費電力量を減らせる。
今後、施工中のトンネル現場で実証実験を継続的に行い、効果の検証やシステムの改善を進めていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 人手不足とコスト削減を実現するLPWA「Sigfox」を採用したインフラ傾斜監視システム
西松建設は、度重なる災害で土砂崩れが頻発している事態を受け、インフラ構造物の傾斜監視をクラウドで管理する「OKIPPA104(オキッパ・テン・フォー)」の販売に注力している。このシステムでは、給電や通信の配線作業が不要で、従来方法の約1/2までコストをカットできるため、その分観測点を増やせ、人手不足解消につながる。 - パイルキャップのせん断耐力を従来の1.4倍以上にする新工法
西松建設は、パイルキャップのせん断耐力を従来の設計方法と比べて、1.4倍以上にする新工法を開発した。新工法を利用したせん断耐力算定方法の妥当性については、既に日本建築総合試験所から建築技術性能証明を取得し証明されている。 - 西松建設がトンネル覆工再生に応じる“はつり工法”を検証
西松建設は、高度成長期に建設されたトンネル覆工が老朽化していることを受け、道路を供用しつつ限られたスペースでコンクリート補修工事が実現可能かを見極める目的で、2種類のはつり工法を用いて検証を行った。 - コンクリート工事の現場管理を省力化、西松建設が業務支援システム
西松建設は、コンクリート工事の施工管理業務支援システム「NCHyper」をハイパーエンジニアリングと共同開発した。工事データのクラウド上で一元管理、各書類への自動転記、電子印の活用により現場管理業務を省力化する。