パイルキャップのせん断耐力を従来の1.4倍以上にする新工法:新工法
西松建設は、パイルキャップのせん断耐力を従来の設計方法と比べて、1.4倍以上にする新工法を開発した。新工法を利用したせん断耐力算定方法の妥当性については、既に日本建築総合試験所から建築技術性能証明を取得し証明されている。
西松建設は、パイルキャップ※1のせん断耐力を向上させる「HSS(High Shear Strength)パイルキャップ工法」を開発した。
※1 パイルキャップ:杭材と上部構造を接続する構造部材。
パイルキャップの大きさを変えずに大きなせん断耐力を確保
既製コンクリート杭の頭部(杭頭部)をパイルキャップに接合するには、杭頭定着筋※2での接合や杭頭部を杭径程度のパイルキャップへ埋め込む手法と、杭頭部をパイルキャップに埋め込みつつ杭頭定着筋も併用する方式(併用接合工法)がある。
※2 杭頭定着筋:杭頭部に取り付けられ、杭とパイルキャップ間の力の伝達を行う鉄筋。
3種類のうち、採用事例の多い併用接合工法のパイルキャップに作用する横方向の力(せん断力)に対する抵抗機構は現在、実験で正確なせん断力が明らかにされていない。そのため、設計者の判断により、杭頭定着筋で接合する方法で使用するパイルキャップのせん断設計式(従来式)などを準用して設計している。
併用接合工法で用いるパイルキャップのせん断力に対する抵抗機構を明らかにして、設計方法を確立したのがHSSパイルキャップ工法で、実大の杭材とパイルキャップを用いた構造性能確認実験で、今まで不明だったせん断力を導き出した。
新工法は、パイルキャップに埋め込んだ杭頭部の周囲部分にU型およびロ型の補強鉄筋を配置する。両補強鉄筋が、コンクリート部分と組み合わさってせん断力に抵抗。また、杭に圧縮の力(圧縮軸力)が作用する場合は、杭頭部とパイルキャップ間の摩擦力がせん断力に耐える。
活用する補強鉄筋や圧縮軸力による摩擦力の効果を設計式に反映することで、新工法ではパイルキャップの大きさを変えることなく、従来式よりも大きなせん断耐力を確保し、より大地震に耐える設計が可能になった。
また、コンクリートのせん断耐力に加え、パイルキャップ内に配置された鉄筋の耐力や、軸力による摩擦抵抗力を組み合わせることで、パイルキャプのサイズを変更せずに、これまでよりも大きなせん断耐力を付加することが容易になり、より大きな地震を踏まえた設計が簡単になった。
新工法の設計式で構築したせん断耐力と、従来式で作成したせん断耐力を同一のパイルキャップ寸法で比較すると、短期許容時の設計※3条件で、従来式と比べて新工法では1.4倍以上大きいせん断耐力を確保できることが判明している。
西松建設は既に、新工法を利用したせん断耐力算定方法の妥当性について、日本建築総合試験所から、建築技術性能証明を取得している。
※3 短期許容時の設計:建物共用期間中に数度遭遇する地震動に対応する設計。
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