竹中工務店が既存外壁の意匠を保存する新工法を開発、大丸心斎橋店に適用:新工法(1/2 ページ)
竹中工務店は、竣工から約90年が経過した大丸心斎橋店旧本館(大阪市中央区)の安全性や機能面での課題などを踏まえるとともに、旗艦店舗としての競争力の向上や心斎橋地区の新たなにぎわいの創出を目指して、建て替え工事を行った。
竹中工務店は、既存外壁を現位置に保存しつつ、内部に建物を建設する「外壁保存構法」を大阪市中央区で計画されている大丸心斎橋店本館の新築工事に初適用したことを公表した。
外壁保存構法は高い耐震性を実現
大丸心斎橋店旧本館の既存外壁は、柱と梁(はり)を一体化したRC造の壁に、1〜2階には石、3〜5階にはタイル、6階には擬石が配置されており、S造の新本館と一体化するには、地震時などの外力による変形追従性能を向上させる必要があった。
変形追従性能を高めた外壁保存構法のワークフローは、まず既存外壁の背面に補強躯体を設けた上で、外観上目立たないように仕上げ方が変わっている3階と6階の位置で保存外壁を水平切断する。次に、切断部に免震装置(弾性すべり支承)を設けて新本館に接続させ、地震時に保存外壁が新本館の動きに合わせてスライドするようにし、耐震性を高めた。
旧本館は1922〜1933年にかけて、建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計で、竹中工務店が施工した。建物の外観は、心斎橋筋側がネオ・ルネサンス様式、御堂筋側のネオ・ゴシック様式でデザインされており、天井のフレスコ画やレリーフ、ステンドグラス、照明などにアールデコの装飾が施された内装で、ヴォーリズの最高傑作とされる。旧本館の建て替えに際し、竹中工務店は、歴史的建築物の価値を継承するため、有識者を交えた検討委員会を立ち上げ、既存建物の保存方法や新本館の意匠方針を検討し、基本方針を決定した。
基本方針では、御堂筋側の外壁を原位置に保ち、内装も利用可能な部材を抽出し活用するとともに、外壁の保存範囲はヴォーリズ設計の遺構が現存している御堂筋側や南北の大宝寺通側、清水町通側とし、維持する外壁を除く部分は解体。その場所に地上11階建て、高さ約60メートルの新本館を建設することを決めた。新本館の外壁に設けられた高層部には、外壁の石の透かし彫りなど、ヴォーリズデザインの特徴の1つである幾何学模様を反復した意匠を継承し、保存外壁よりもセットバックして、景観的調和を図ることを定めた。
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