西松建設と長崎大、水力発電所トンネル点検用の“飛行船ロボ”を開発:ロボット
西松建設は、長崎大学と共同で、飛行船型の水路トンネル調査ロボット「トンネルマンボウ」を開発した。実証実験では、水力発電所の水路トンネル壁面を自律飛行で点検することに成功した。
西松建設と長崎大学海洋未来イノベーション機構 山本郁夫教授研究室は2020年6月、飛行船型の水路トンネル調査ロボット「トンネルマンボウ」を開発したと明らかにした。
最長6キロの水路トンネル点検が可能
国内では、水力発電所水路トンネルの老朽化が進行しており、地震や長期運用の影響もあり、トンネル表面にひび割れなどが発生し、耐久性が低下して崩落の危険性が高まっている。また、これまでの点検方法は、人が断水時の水路トンネル内部に入って調べていたが、点検距離の長さと崩落危険の問題でロボットに置き換えることが求められていた。
トンネルマンボウは、マルチロータ型飛行船ロボットで、サイズは全長3.7メートル、直径1.2メートル。水路トンネルを自律飛行して、水路トンネル壁面全周を撮影して点検する。搭載されたカメラユニットは、1センチ程度までの傷を検出し、飛行ドローンに比べると、消費電力が少なく、機器搭載のペイロードが大きいという利点がある。
実験では、全長約2.6キロの水路トンネルで壁面点検を行った。その結果、断水時に安定かつ安全に自律飛行して壁面点検が行えることを確認し、連続2度のトンネル点検で機能の再現性も検証された。点検終了時のバッテリー消費量から推測すると、最長で6キロまでの飛行に耐えると判断された。
水力発電所の水路トンネルは、平均約50年でひび割れや漏水などの老朽化が目立つため、今後はトンネルマンボウの積極的な導入が期待される。西松建設では、施設量が膨大で経年劣化が進む、農業用水路トンネルへの提案も進めていくとしている。
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