【新連載】「不動産テック市場の行方」不動産業界のDXは35年前から始まった――:急成長を遂げる不動産テック市場の行方(1)(2/2 ページ)
近年、急成長を遂げる“不動産テック市場”。非対面・非接触での営業や契約締結、VRでの物件内見、スマートロックなどの新しい不動産テックサービスが次々と登場し、不動産業界にもデジタル変革の波が押し寄せています。本連載では、不動産テック市場を俯瞰的に見ながら、延期が決定した東京五輪の影響やCOVID-19で意図せず普及が進む“リモートワーク”に伴う市場変化などを織り交ぜ、足元の不動産テック市場の現況と今後の見通しをアットホーム 原雅史氏がレポートしていきます。連載第1回では、不動産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)が約35年前から始まっていると言われていることを踏まえ、戦後を出発点にした不動産業界のDXがこれまでどのように発展してきたかを振り返ります。
■不動産業界のDXはいつ始まった?
不動産業界のDXは、まず物件情報をオンライン上でやりとりする不動産会社間のプラットフォームづくりから始まりました。アットホームを例にすると、1979年に売上管理などを行う販売管理システムを社内で導入し、実務に活用できるのかどうかなどの検証を開始。その後、不動産業協界・団体から委託を受け、物件情報処理システムを開発し、物件情報を入手できる不動産会社向けのオンラインサービスを1985年に開始するなど、IT活用に積極的に取り組みました。
同様のサービスでは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピュータネットワークシステム「レインズ(REINS)」も、1986年を皮切りに全国の不動産会社が利用しています。オンライン上で物件情報を共有できるようになることで、全国の不動産会社がリアルタイムに物件情報を提供・取得でき、不動産会社にとっては早期成約、消費者にとってはよりたくさんの物件を紹介してもらえる環境が整いました。
■不動産情報が手軽に入手できる時代へ
その後、1996年頃からは、消費者向けの不動産情報ポータルサイトもインターネット上で続々とオープン。不動産会社だけではなく、消費者もWebを介して、手軽に物件を探せるようになりました。1980年代から始まった不動産情報流通の分野におけるDXは、当時は誰も予見していなかったほど進み、豊富な不動産情報に誰もが簡単にアクセスできる時代が到来しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 産業動向:今期堅調も新型コロナで来期は大幅減を懸念、2020年3月期通期決算から見る建設市況
ヒューマンタッチ総研は、建設業主要各社の2020年3月期通期決算のまとめと今後の市場予測を公表した。レポートでは、新型コロナウイルスの影響を見据えたゼネコンの2021年3月期業績予測が、7社中6社で大幅な減収減益となる見通しが指摘されている。 - BIM:フリーダムアーキが“住宅分野のBIMコンサル”を開始、BIM確認申請100件のノウハウ提供
年間約400棟の注文住宅やデザイン住宅を手掛けるフリーダムアーキテクツは、住宅分野でのBIMの環境構築や運用をサポートする「BIMコンサルティングサービス」を開始した。 - 産業動向:積水ハウスがエクステリア事業の強化を狙い、岐阜造園と業務提携
積水ハウスは、外構造園に実績を豊富に有す岐阜造園と業務提携を結び、エクステリア事業の基盤を一層強固なものにした。 - パナソニックが考える「2020以降の街づくり」:パナソニックLS社の電路事業の中核会社PSGSの生産体制とは?
パナソニック スイッチギアシステムズは、社内で従業員が密集しないように注意を促すとともに、訪問者へ体温計測を行うなどして、感染者の入場を防ぎつつ、住宅分電盤といった製品の製造を継続している。2020年6月17日、愛知県尾張旭市にある同社の瀬戸工場で開催された電路事業説明会では、住宅分電盤などの生産体制を明らかにした。 - LED照明:「東京スカイツリー」のライトアップにパナソニックLS社のLED投光器が採用、地上497mへ見に行った
夜の東京スカイツリーを灯すLED照明が2020年2月に刷新された。2020年に開催を予定していた東京五輪に合わせ、通常の「粋」「雅」「幟」の照明デザインに、躍動感が加わり、東京の新たなシンボルとして生まれ変わった。LED投光器は、パナソニック ライフソリューションズ社の製品が新規で347基も採用され、スカイツリー仕様にカスタマイズされた。普段は、滅多に人が立ち入ることが無い497メートル地点まで登り、スカイツリーのライティング増強プロジェクトの裏側を取材した。