鹿島建設が新床版更新システムを開発、床版の撤去から架設までの工程を従来比で3分の1に短縮:新工法
鹿島建設は、道路橋床版更新工事の作業効率を高める取り組みを加速している。
鹿島建設は、道路橋床版更新工事に伴う交通規制などによる利用者などへの負担を低減する新床版更新システム「スマート床版更新(SDR)システム」を開発した。
4つの作業を同時進行
高度経済成長期に整備された道路橋は、大型車の通行量の増加や凍結防止剤の散布などで、現在急速に劣化が進行しており、適切な維持管理と更新が喫緊の課題となっている。道路橋の床版更新工事にあたっては、工事に伴う利用者などへの負担を削減するため、交通規制の期間や範囲を最小限にする技術に加え、近接する交通や周辺施設への安全を確保できる施工法が求められている。
スマート床版更新システムはこういったニーズに応えるため開発された。新システムは、床版取り替えで実施する「既存床版の縁切り・撤去」「主桁(しゅげた)ケレン作業」「高さ調整工」「新設床版の搬入・架設」の4つの作業を各専門のチームが前進しながら並行して行う“移動式工場”を目指した施工システムだという。標準的な工法と比べ、それぞれのチームで連続作業が進められるため、工期の大幅な短縮を実現する。
具体的には、既存床版の縁切り・撤去では、撤去可能な大きさに切断した既設床版上に、新たに開発した床版撤去機で吊(つ)り下げられた剝離(はくり)装置をセットし、鋼桁(こうけた)から床版を引き剥(は)がす。引き剥がした床版は剥離装置とともに吊り上げられた後、床版撤去機の内部に誘導した搬出用トラックに積み込まれ、場外に搬出される。
主桁ケレン作業では、鋼桁上フランジのケレン作業を行い、防サビ剤を塗布する。必要に応じてずれ止めも除去。新たに開発したR面取りロボットやケレンロボットを適用することで、作業員の負荷を大幅に減らせる。
高さ調整工では、床版の高さを調整するための硬質ゴムと、床版下の無収縮モルタルの漏れ止めとなるソールスポンジを配置する。
新設床版の搬入・架設では、新設床版を乗せたターンテーブル付の床版運搬台車を新たに開発した床版架設機の内部を通過させながら、架設位置の手前まで移動する。ターンテーブルを90度回転して床版架設機で新設床版を吊り上げ、架設位置まで前進し、床版を降下・設置する。
新システムは、大型クレーンを用いた標準的な施工方法に対し、既設床版の撤去から新設床版の架設までの工程を約3分の1に短縮する。
加えて、床版撤去機および床版架設機の内部を床版搬出用トラックと床版運搬台車が通れるようになるため、既設床版と新設床版の旋回を伴う揚重作業が不要となる。これにより、最小規制範囲での施工が可能になり、一車線規制による半断面施工時においても、近接する交通や周辺施設に対する安全性を保てる。
また、軽量な床版撤去機と床版架設機を用いることで、大型クレーンを用いた標準的な施工方法と比較して、施工時に鋼桁に与える発生応力を2分の1から3分の1に下げられる。
新システムの採用とともに、JIS認証(JIS A 5373)を取得したPC床版を製作するプレキャスト工場を工事現場の近傍に設けることで、床版の製作費や運搬費が削減でき、工事費の2割低減が見込める。床版部材の車両運搬に伴う騒音振動や交通渋滞、CO2排出などによる社会的負荷を低減することで、効果を高められる。さらに、サイトプレキャスト工場とすることで、地元企業からの生コンクリート調達が容易になり、地元との協業も図れる。
実物大の実証実験で、優れた結果を得たことで、今後は実工事への適用に向け、新システムを提案していくという。自動化をはじめとした機能向上についても研究開発を進めていく。
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