AI画像認識で操船者の負担軽減、東亜建設工業が船舶監視システム:AI
東亜建設工業は、AIにより他船舶を自動識別する監視システムを港湾工事へ試験的に導入し、実用性の検証を行った。同システム活用により、港湾を行き交う他船舶の船種を高い確率で検知でき、港湾工事における航行監視の効率化・負担軽減が可能となる。
東亜建設工業は2020年3月、富士通が開発したAI画像船舶認識技術を活用して港湾工事で他船舶の船種を自動識別する船舶監視システムを試験導入、実用性を検証したと発表した。本システムを活用することで、4Kカメラで撮影した高画質映像から船舶の船種(大型船・小型船)を自動識別し、操船者へ知らせることで船舶監視の負担軽減につながる。
今回導入したAI画像船舶認識技術では、カメラで撮影された一般船舶の船種(大型船・小型船)を高精度に識別可能なCNNモデル(Convolutional Neural Network)を使用。AIの教師データには、富士通が構築したデータと東亜建設工業のストックデータを併用することで、一般船舶のほか、作業船や潜水士船、警戒船などの識別が可能となった。
実工事での試験導入では、船種を高い検知率で識別し、操船者に対して他船舶情報を提供できた。本システムの構成は、4Kカメラ(映像情報)、ノートPC(ソフトウェア)、警報装置とシンプルであり、さまざまな船舶への搭載が可能だ。
同社は、大型船の監視にAIS(自動船舶識別装置)を、小型船の監視に船舶レーダーを利用する航行支援システム「ARナビ」を2019年に開発し、自社の港湾工事で使用してきた。同システムには、他船舶の航行経路や危険エリアなどを、視覚情報と音声情報で分かりやすくナビできるというメリットがある。しかし、AISは情報の更新間隔が不規則であること、船舶レーダーは波と小型船の区別がつかないことなどの課題があった。
今後は本システムとARナビを連携し、土運船(押船)などの長距離航行や一般航行船舶(特に小型船)が多く航行する現場において検証を重ね、港湾工事に特化したシステムとして機能拡張を図っていく。
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