自律型ロボットが活躍する新世代の建築生産システム、建設現場のロボ開発最前線:Autodesk University Japan 2019(4/4 ページ)
1804年に創業した大手建設会社の清水建設。戦前から研究開発にも注力してきた同社は、1944年に技術研究所を設置し、建設技術の進歩をリードしてきた。「10年後を準備する」をキーワードに現在ではロボットやAIを活用した生産革新にも取り組んでいる。
オープンイノベーションがこれからは不可欠
「開発を進めていくにあたって、オープンイノベーションでやっていきたいと考えている。当社がこの分野で先行し、差別化を図っていくということよりも、さまざまな企業とともに開発を進めることで分母を増やし、みんなで使える技術としていきたい」
印藤氏がオープンイノベーションにこだわる背景には、海外における開発に比べ国内の状況が遅れていることに強い危機感を抱いているからだ。例えば、中国は国策として「中国製造2025」を掲げ、トップダウンで世界の製造強国になることを目指し推進力のある開発が迅速に進められている。また、欧米においては、ドイツ発の産業革命「インダストリー4.0」に代表されるように国を挙げ、急ピッチで社会実装に取り組む他、企業内だけではなくライバル企業同士でも競争領域に限らず協調領域として連携。さまざまな業務を標準化や共通化することで、産業全体の底上げが可能となり、進化のスピードを加速させている。
印藤氏は最後に、「ソフトなどのプロトコルを共通化させることで、協働で進化することが可能だ。国内では、今はまだ群雄割拠という状態で、それぞれが独自に開発し、競争している。だが、コアな部分を標準化や共通化するために、オープンイノベーションとして開発することで産業全体がボトムアップしていくことができる。より魅力のある産業として、建設業界における業務効率化を図っていくため、今必要なことは競争ではなく、共創ということがいま最も伝えたいメッセージだ」と要望した。
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★「アナログな業界で“不動産テック”を巻き起こす」、オープンハウスがAI/RPAで2.5万時間を削減
オープンハウスは、他社に先駆け、不動産業務にAIやRPA(Robotics Process Automation)を採り入れ、年間2万5700時間の工数削減に成功している。
オープンハウス 情報システム部 課長 中川帝人氏(シニアデータサイエンティスト)へのインタビューでは、オープンハウス飛躍のヒミツやなぜ住宅メーカーがAI/RPAを活用するのかを探った。
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