自律型ロボットが活躍する新世代の建築生産システム、建設現場のロボ開発最前線:Autodesk University Japan 2019(2/4 ページ)
1804年に創業した大手建設会社の清水建設。戦前から研究開発にも注力してきた同社は、1944年に技術研究所を設置し、建設技術の進歩をリードしてきた。「10年後を準備する」をキーワードに現在ではロボットやAIを活用した生産革新にも取り組んでいる。
全工程ロボットは開発レンジに課題、清水が目指したのは部分工程ロボ
土木工事で使用されるロボットの場合、その多くはGPSによる通信で運用される。だが、建築現場は屋内であるため使用できないことがネックとなる。印藤氏が考え出したのが、携帯電話回線を活用することだった。これまでのロボットは、アシスト機械の枠を超えていないのが実情だ。最終的には、全工程自立ロボットがゴールとなるが、開発レンジが長くなりコストも膨大となる。このため、近い未来に向けた取り組みとして、部分工程ロボットに照準を定めた。
「過去10年間のプロセスを見ると、基礎の工程では鉄骨化、プレキャスト化、工業化によって省人化が図られてきた。これからの省人化に向けて、有効なものは設備や仕上げの工程部分にかかるものだと考えた」。
同社が実施した現場への調査では、基礎と躯体が建った後の工程で、業務効率化に効果があるとされたのが、“設備・仕上げ”の部分だった。建物内部の工事では、取り付ける材料などは、職人が一つ一つ手作業で設置箇所まで運んでいる。
「現場では、自分たちが取り付ける材料を運ぶとなると、朝から作業して全部運び入れるのに昼までかかると聞く。作業時間のうち、半分は物を運んでいる時間だと分かった。仮にロボットが自律して材料運びをサポートしてくれれば、職人の時間を全て取り付けなどの作業に当てられ、確実な生産性向上につながる」。
自律するロボットによって改善される業務
開発に当たっては、「物を運ぶ」「溶接作業」「天井ボードの取り付け」の3つにターゲットを絞り着手。現在では、物を運ぶ「Robo-Carrier」、溶接を行う「Robo-Welder」、仕上げ作業を連携して行う多能工ロボ「Robo-Buddy」として具現化した。開発時、念頭に置いたのが、ロボットのための段取りが不必要だということ。ロボット自身が、材料を認識し、自律的に互いに連携し合い、職人をサポートする形態にした。
「一般的に認識しているロボットは、そのほとんどが床に固定されている。生産ラインに材料が流れてきて、取り付けなどの作業が行われるというものだ。工場であればそうした定常化された作業で良いが、建設現場は常に動くもの。動いている座標の中でロボットが存在し、それぞれを制御するというのは無理だという意見も多かった」。
だが、印藤氏は独自の研究開発によって、その壁を乗り越えた。自己位置の認識精度は50ミリ。ワイヤや磁気テープによる誘導も必要なく、ビーコンでの制御でもない。スラムという技術を作り出して動かしている。
ロボットたちへの命令といった管理体制も、現場で動かすことを意識した仕様となっている。工場のようにコンソールの前でオペレーターが常に管理し、指令を出すというものではなく、現場監督が持つiPadやiPhoneを使って、マスタークラウドに命令を簡単入力するだけで、複数のロボットが連動して動く仕組みを目指した。
具体的なロボットの動きとしては、資材搬送ロボットのRobo-Carrierの場合、1台のロボットがエレベーターまでロボットを運び、上で待機しているロボットがその材料を受け取る。その階の材料運びを終えると、ロボットは自身で判断し、それぞれの別の場所へと移動する。
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