ポンプ機場で有効な流れ場や最適な配管の取り回しなどを確認可能なVR活用事例:第4回[次世代]火力発電EXPO(2/2 ページ)
荏原製作所は、設備のスケール間や各部品、周辺に存在する配管類の取り回しなどを正確に把握するため、VR技術の活用を推進している。
複雑な流動の検証も容易
前回の同展示会では、ポンプ機場の設計などで役立つ流れ場(作業や物体が流動する場所)の実用性を確かめられるVRシステムを紹介したという。
従来、流れ場の解析は3Dモデルを使用しており、得られる情報は、速度ベクトルや圧力コンターなどにとどまり、PCの画面に表示するか、もしくは紙面に出力され評価されていた。
また、設定した断面で流れ場を切断し画面に映していたため、ポンプ内部流路のように複雑な形状をした流れ場などでは、断面に垂直方向の情報を付加することが困難で、流れ場をより詳細に評定することが困難だった。
現在、鳥瞰図(ちょうかんず)やアニメーション表示などを利用した手法も存在するが、入り組んだ流れ場の把握は難しいという。
前回のVRシステムは、現状での問題点を解消した。システムは、没入型仮想現実体験装置(CAVE)やHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を用いてVR空間上に構築した流れ場へ利用者が没入することで、詳細な流れ場の精査を実現する仕組みだ。CAVEではフィアラックス製「EasyVR」、HMDではシーメンス製「STAR-CCM+VR」をソフトウェアに採用した。
先行事例として、大型立軸ポンプの吸い込みベルマウス周辺の流れ場の分析を試みている。これまでの3Dモデルによる画像解析では、ベルマウス下流側の複雑な流動を確かめられるが、当該領域に存在している水中渦や空気吸い込み渦の発生位置、方向などを正確に調査することが難しかった。
一方、CAVEを使用した場合は、複数人で3Dモデルの共有が容易で、利用者が互いの存在と姿を認識しながら没入するため、流動状況に指さししたり、解析結果に対して議論が行えた。HMDでは、システムと装置自体が可搬であるため、社内や各事業所で、VR技術を用いた評価が進められる。両方式とも、利用者が流れ場へ没入することで、局所的で複雑な流動様相でも理解が簡単になることが判明した。
特に今回の解析対象では、水中渦や吸い込み渦とベルマウスの位置関係、渦による複雑な3D流動様相の確認に有効だったという。
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