2020年度の建設業界は防災・減災やインフラ対策に大幅な予算増で、堅調に推移:産業動向(2/2 ページ)
ヒューマンタッチ総研は、国土交通省の「2020年度予算概要」などから分析した建設業界の今後についてまとめた。これによると2020年度は、防災・減災対策や老朽化したインフラ対策を中心に2019年度を上回る予算が投入され、建設市場は堅調に推移すると予測している。
建設業の人材確保、人材育成に前年を上回る予算を確保
次に、国土交通省と厚生労働省が連携して行う「建設業の人材確保・育成に向けて(2020年度予算案の概要)」では、建設産業の働き方改革の推進に1.46億円(前年度比140%)、建設事業主などに対する助成金に61.8億円(同105%)、ハローワークにおける人材不足分野に関わる就職支援の拡充に38.6億円(同113%)と、前年度を上回る予算が投入されている。
ヒューマンタッチ総研では、今後についても、建設業の人材確保や人材育成への積極的な支援が維持されると推測している(図表3)。
2020年度も建設市場は堅調に推移する見通し
国土交通省の統計資料から、建設工事の出来高、手持ち工事高、受注工事高の推移を分析すると、2019年11月の出来高は5兆26億円で、前年同月の4兆9156億円を上回った(図4)。2019年の出来高は、好調であった2018年とほぼ同じ水準で推移しており、追い込みに入った東京オリンピック・パラリンピック関連の建設需要が継続したことを背景に、2019年の建設市場は堅調に推移した。
また、手持ち工事高(受注した工事金額のうち、その時点で工事が終わっていない金額)については2019年11月時点で33兆9555億円となり、前年同月の32兆8441億円を超える高水準となった。また、2019年の受注工事高は、ほぼ2018年並みに高く、中長期的にも建設市場は堅調に推移すると考えられる。
ヒューマンタッチ総研所長・高本和幸氏は、「2020年度予算を見ると、防災・減災対策と老朽化したインフラの整備に引き続き、大きな予算が投入される方向性になっている。また、手持ち工事高も豊富であり受注高も高水準なことから、東京五輪が終了する2020年9月以降でも、建設市場は堅調に成長するのではないかと考えられる」。
また、「建設業における人材不足は大きな政策課題だと考えられており、人材確保、育成を支援するための予算も前年度を上回る規模で投入されている。このような状況を考慮すると、2020年度についても、堅調な建設市場をバックに、人材不足への対応が建設業各社にとって大きな課題になる」とコメント。
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