施工ロボ・遠隔管理・BIMを柱にした「鹿島の生産性向上ビジョン」、“18のICT技術”を新築ビル工事で実証
鹿島建設は、建築工事に関わるあらゆる生産プロセスの変革を推進して生産性の向上を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」を策定した。第一段階として、名古屋市中区錦二丁目の自社ビル新築工事で、施工ロボットや巡回するドローン、作業者の負担を軽減するアシストスーツの他、BIMを基軸に出来形検査やAR/VR技術など、18項目もの新技術の集中実証を行う。
鹿島建設は、建築の生産プロセスを変革する「鹿島スマート生産ビジョン」を策定した。同社では建設業を取り巻く環境は、今後ますます厳しいものになると想定しており、ICTロボット技術の開発と現場管理手法の革新を進め、2025年を目標に、より有効な建築生産プロセスの実現を目指す。
ロボット施工・遠隔管理・BIMを柱に生産性向上を図る
鹿島スマート生産ビジョンは、ロボット・遠隔・BIM(Building Information Modeling)の3つの柱で構成。ロボットは、資材運搬などの単純作業、耐火被覆吹付などの労力がいる作業を担う。同時に、特殊な部材の施工や複雑な調整を要する作業については、従来通り人が行い、ロボットと人の分担作業で生産性向上を図る。
遠隔技術では、現物確認と遠隔管理を組み合わせ、現場管理者の働き方改革を推進する。作業進捗状況などの単純な確認業務は、工事事務所や現場外からの遠隔管理にシフトするとともに、協力会社や資材メーカーといった関係者とのリアルタイムな情報共有も進める。
BIMの活用では、詳細な仕様決定や図面上の干渉・不整合箇所のチェックと修正作業の迅速化、施工ロボットや現場管理ツールとのデータ連携で現場の省人化を目指す。また、現場管理業務の省力化に向けた帳票類の自動作成システム、施工中や竣工後に得られる実績データやノウハウを、今後の設計・施工計画にフィードバックする仕組みもあわせて構築する。
ビジョンを実現する第一弾として、愛知県名古屋市で施工中の「(仮称)鹿島伏見ビル新築工事」をパイロット現場に選定した。ここでは、各種の施工ロボットや現場管理ツールなど、18項目にも及ぶICT技術・システムを集中的に適用し、効果を測定しつつ、ビジョンの実現に向けた実証を進める。
導入する技術は、ロボットが、鉄骨溶接(柱全周・梁上向き)、耐火被覆吹付、コンクリート押え。作業負担を物理的に軽減するアシスト機器は、外装取付アシストマシン、疲労軽減アシストスーツ。
また、作業員の体調や位置情報などを管理するIoTシステムは、ウェアラブルバイブレータ、現場内モニタリングシステム(ウェアラブル/固定カメラ)、バイタルセンサー体調管理支援システム。現場管理は、搬送管理システム、顔認証入退場管理システム、資機材位置・稼働モニタリングシステム、鉄骨建方精度モニタリングシステムがあり、これらを組み合わせることで、現場の詳細なヒトとモノの状況を、現場から離れた工事事務所でもリアルタイムに把握することができる。
BIMをベースにした技術では、BIM/出来形検査連携システム、BIM/VR活用(もの決め、安全教育)、BIM/ARチェックシステム、BIM/鉄筋加工連携システムを活用する。他に現場内のドローン自動巡回システム、技能伝承システム(ノウハウ収集活用)も実証実験を行う。
鹿島伏見ビル新築工事の概要は、CFT(コンクリート充填鋼管)造・地上13階建て。1階は店舗で2階以上はオフィスとなる見通し。工期は2017年11月〜2019年9月。
鹿島建設では、今後の実証実験を経て、実用化された技術を全国の施工現場に積極的に導入していき、2025年までの建築生産プロセス実現を目標としている。
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