中小河川の“浸水想定区域”を設定する手引き作成を目指し検討会を設立、国交省:プロジェクト
国土交通省は、豪雨や台風などの自然災害により発生する沿川(えんせん)地域の被害を少なくする取り組みを推進している。このほど、中小河川の浸水想定区域を設定するのに役立つガイドラインを作成することを目的とした検討会を設立した。
国土交通省は2020年1月9日、「第1回 中小河川の水害リスク評価に関する技術検討会」を開催した。同会は、水防法で指定されていない都道府県が管理する中小河川「その他河川」の浸水が予想される範囲の設定と、水害リスクに関する評価手法の技術的な検討を行い、これらをとりまとめた手引きを作成することを目的にしている。
進まない中小河川における浸水想定区域の周知
同会設立の背景には、想定最大規模降雨により浸水が想定される区域(洪水浸水想定区域)を指す洪水予報河川と水位周知河川以外のその他河川が、2019年10月の台風第19号などの豪雨で氾濫(はんらん)し、沿川(えんせん)地域に被害が生じたことがある。
現在、洪水浸水想定区域の指定には2つの課題があるという。まず、洪水予報河川と水位周知河川において、想定最大規模降雨に対応した洪水浸水想定区域を特定している都道府県管理河川が8割にとどまっていること。もう一方は、その他河川において、浸水が見込まれる範囲の周知が進んでいないことだという。同会では、こういった課題の解消に役立つ手引きを作ることも目指している。
今回は、その他河川における洪水の水害リスク評価の状況について、47都道府県を対象に行ったアンケート調査のデータなどに基づき議論を重ねた。
アンケート調査の結果は、47都道府県のうち、8団体が既にその他河川における水害リスク評価を行っており、28団体が今後実施予定となった。
今後のスケジュールは、2020年3月に第2回を開催し、「中小河川における簡易的な水害リスク情報作成の手引き」の改定案を提示し、同年5月に開く第3回で、その改定案をまとめ、その後、中小河川の水害リスク情報を順次公開していく予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 激甚化する水災害に対し、「締切工技術」と「3D浸水ハザードマップ」を研究開発
寒地土木研究所は、北海道開発の推進に資することを目的に設立された国内唯一の寒地土木技術に関する試験研究機関。最新の研究では、近年頻発する台風や豪雨などに伴う、水災害に対し、堤防決壊の早期対応と3D浸水ハザードマップによるハードとソフト両面から防災技術の開発を進めている。 - 建物の浸水リスクを可視化、BIMで解析時間を超短縮
大成建設は豪雨や洪水などによる建物内部の浸水リスクを可視化できる評価・診断システムを開発した。BIM(Building Information Modeling)データを活用することで、従来より大幅に解析時間を短縮できるようになったのが特徴だ。 - BIMで災害時にビル地下の“浸水リスク”を可視化、最短の「避難経路」と「所要時間」を提案
大成建設は、建物内部の浸水リスクを評価・判断するシステム「T-Flood Analyzer」に、避難経路と避難にかかる所要時間を算出する機能を追加した。新機能により、集中豪雨や台風など、近年都市の排水能力を超え、甚大な被害をもたらす水害に対して有効な防災計画が立案できる。 - マンホールをIoT計測しAIで異常検知など、下水道新技術9件を国交省が研究対象に採択
国土交通省は、2019年度のB-DASHプロジェクトと下水道応用技術研究の対象として計9件の新技術を採択した。B-DASHプロジェクトとは、新技術の研究開発および実用化を加速することで、下水道事業における低炭素/循環型社会の構築やライフサイクルコスト縮減、浸水の対策、老朽化対策などを実現し、企業による水ビジネスの海外展開を支援することを目的に、2011年度よりスタートした下水道革新的技術実証事業を指す。