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激甚化する水災害に対し、「締切工技術」と「3D浸水ハザードマップ」を研究開発令和元年度土木研究所講演会(1/3 ページ)

寒地土木研究所は、北海道開発の推進に資することを目的に設立された国内唯一の寒地土木技術に関する試験研究機関。最新の研究では、近年頻発する台風や豪雨などに伴う、水災害に対し、堤防決壊の早期対応と3D浸水ハザードマップによるハードとソフト両面から防災技術の開発を進めている。

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 土木研究所主催の「令和元年度土木研究所講演会」が2019年10月17日、東京・千代田区の日本教育会館一ツ橋ホールで開催され、土木分野の研究成果や最新技術が多数紹介された。

 本稿では、主要テーマの一つ「激甚化する自然災害リスクの評価と対策」にスポットを当てた寒地土木研究所 寒地水圏研究グループ 上席研究員・前田俊一氏の「激甚化する水災害に対する寒地土木研究所の取り組み」についてのセッションをレポートする。

堤防決壊時に決壊口を早期に締め切るには?


寒地土木研究所 寒地水圏研究グループ 上席研究員・前田俊一氏

 寒地土木研究所では、近年増加している台風や豪雨の影響で発生する水災害に対し、ハードとソフトの両面から対策技術の研究を進めている。

 ハードに関しては、破堤氾濫流量の軽減と、高流速下の水流・水面波・掃流砂による構造物の安定性評価と維持管理の技術開発に着手している。このうち、破堤氾濫流量の軽減は、堤防決壊時に河川水が堤内地に流入している状況で、決壊した箇所を早期に締め切る工事が対象となる。決壊口を早く締め切れれば、総氾濫ボリュームを抑え、洪水被害を最小限にとどめることにつながり、次の出水にも迅速に備えられる。

 しかしこれまでは、堤防決壊後、決壊口の拡がり方が不明だったため、効率的な締切工事ができていなかった。

 研究所では、河道の特性に応じた決壊口の拡幅現象の分類と、それに準じた各締切工事のポイントを示し、さらに迅速さが求められるため、コンクリブロックなどの資材投入の効率化に向けた実験も行った。

 まず拡幅現象の分類では、勾配の緩急と川幅の広狭でカテゴリーを4つに分け、シミュレーションで分析。その結果、川の状況に対応した3つの締切工事のポイントを導き出した。


河道特性に応じた決壊口の拡幅現象の分類図

決壊口の拡幅現象の4カテゴリー

 これによると、河床勾配が急な場合は、下流側への決壊口の拡がりが増すため、この部分の欠口止工が最優先される。逆に緩いケースでは、決壊口の中央は流速が速いため、両側からの漸縮工が有効となり、深掘れも生じることを考慮して多くの資材を投入する必要がある。

 また、川幅が広い河川では、氾濫流量がそもそも多いため、締切工の減災効果が見込まれ、加えて勾配が急であれば、投入資材が流出することを防ぐ措置も講じなければならないと提言した。

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