BIMで災害時にビル地下の“浸水リスク”を可視化、最短の「避難経路」と「所要時間」を提案:災害対策×ICT
大成建設は、建物内部の浸水リスクを評価・判断するシステム「T-Flood Analyzer」に、避難経路と避難にかかる所要時間を算出する機能を追加した。新機能により、集中豪雨や台風など、近年都市の排水能力を超え、甚大な被害をもたらす水害に対して有効な防災計画が立案できる。
大成建設は、災害時にビル内への浸水リスクを可視化するシステム「T-Flood Analyzer」を2016年に開発し、今回新たに「避難経路」と「避難時間」を算出する機能を加えた。
複数の浸水対策案を短時間で比較・評価が可能に
T-Flood Analyzerは、BIM(Building Information Modeling)モデルと連携して、建物内部の浸水状況を迅速に解析し、3次元化で浸水リスクを表示できる評価・診断システム。
これまであった浸水リスクの診断方法では、解析前に必要な水の流入経路や建物内各室の開口部位置などを算出するのにかなりの時間を要していた。解析結果も、各部屋の水深深化を時系列で表示したグラフでしか表示できず、隣接する部屋の水深変化を容易に確認できないなどの課題があった。
T-Flood Analyzerであれば、BIMまたはCADデータを活用するため、ビル内の各部屋への浸水経路、浸水量、浸水時間などの算出結果が3次元または2次元で可視化。ビル全体への流入水の侵入経路や浸水深さを一目で把握できる。浸水対策の防水扉や排水ポンプの配置・数量を変更して、複数の対策案を比較できるため、最適な対策を短時間で選定するのに役立つ。
新たに加わった機能は、避難ルートと避難時間のシミュレーション。部屋によって浸水状況(被害規模、時間)には差があるため、地下階の各居室から地上出口までの最短避難経路と所要時間を表示。避難経路が浸水した場合には、水の深さに応じて歩行速度も低下することを想定に入れた避難時間がはじき出される。各部屋からの避難経路・所要時間を比べながら、止水板など地下浸水を防ぐ対策を検討することができる。
国土交通省では、水害対策を定めた「水防法」で、出水時の地下街において、避難に支障がある経路を使わずに地上に避難できる「安全な避難の確認方法」について告示。これに基づき、札幌地下街や大阪市東梅田地区などで大規模な洪水や雨水を排出できない“内水氾濫”、高潮などを想定した浸水防止計画は、全国的に始まっている。
新機能が備わったT-Flood Analyzerでは、建物や利用者の状況に合わせたより安全で安心な防災計画の策定が実現する。避難時に配慮が必要な高齢者や子供が利用する居室は、短時間で避難できる場所を割り当てるなど、最適な居室配置を設定できる。
また、システム上で事前にシミュレーションした避難経路のパターンと、建物周辺の降雨情報を連動させることで、利用者の年齢などを考慮した避難計画を事前に検討することも可能だという。集中豪雨や台風など、近年甚大な被害をもたらしている都市部での水害対策に有効なソリューションとなることが期待される。
大成建設では、建物地下階や地下街などにおいて、施設内の居室や共有空間の利用方法、利用者の避難安全などを考慮した浸水リスクマネジメントに、T-Flood Analyzerを積極的に展開、活用していくとしている。
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