揺れを最大34%抑える新シールド工法、マシンに逆位相の振動を与えて低減:新工法
大林組は、シールドトンネル工事で、周辺に影響を与えるマシンの振動を強制的に逆位相の揺れを発生させて打ち消す新工法を開発した。実現場への適用では、34%の揺れを抑えることが実現したという。
大林組は2019年12月、JIMテクノロジーのアクティブ制振技術を採用することで、シールド掘進時の振動を低減する技術「ゆれなシールド」を開発したことを公表した。
多様な振動発生原因に対して効果を発揮
地上部が既に開発されている立地での地下トンネル工事では、施工の安定性や地上部への影響が少ないため、シールド工法が多く採用されるケースは多い。しかし、シールドマシンは掘り進んでいくことに伴い、振動が発生するため、周辺環境に悪影響を及ぼしてしまう。
大林組とJIMテクノロジーのゆれなシールドは、建物の振動抑制に用いられるアクティブ制振技術を適用している。その仕組みは、シールドマシンから揺れが発生すると、発生源のシールドマシン自体に対して強制的に逆位相の振動を与えて低減させるというものだ。
シールド本体を前胴と後胴に分けて、屈曲させるための油圧ジャッキ(中折れジャッキ)を有するシールドマシンの場合には、複数本あるジャッキの一部を油圧アクチュエータとして使用。ジャッキに取り付けられた加速度計や変位計が振動の振幅や周波数を計測すると、瞬時に油圧制御データが制御装置から発信される。アクチュエータとなる中折れジャッキは、応答性能が高い電気油圧弁であるサーボバルブにより起振し、計測した振動を打ち消すための逆位相の振動を起こす。
加速度計、変位計、サーボバルブは、アクチュエータとして利用する中折れジャッキに対しそれぞれ設置。振動が発生した際は、個々のサーボバルブがそれぞれの計測結果に応じて中折れジャッキを起振させるため、さまざまな振動にきめ細かく柔軟に対応する。主に4つに分類されるシールドマシンの振動発生原因である「立坑仮壁直接切削時」「礫(れき)地盤掘削時」「砂地盤掘削時」「急曲線掘削時」のいずれに対しても有効に働く。
シールドマシンは、シールド外径φ2メートル程度のものから、大断面といわれる外径φ10メートルを超えるものまでがある。ゆれなシールドでは、外径の大小に関わらず導入可能で、中折れジャッキを有さないシールドマシンは、代わりにシールドジャッキを油圧アクチュエータとして起振することで振動を低減させることも可能だ。
なお、大林組が施工した現場で導入した結果、シールドマシンの振動を最大34%低減することが確認された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 飛島建設ら、低振動・低騒音施工「ブラストキー工法」適用範囲拡大へ
飛島建設、東亜建設工業は、低振動・低騒音施工に加え環境に配慮した目荒らし工法(ブラストキー工法)に関する技術を拡大。これにより広範囲の接合部に用いることが可能となる - 環境振動が少ない快適なビルを設計、面倒な3次元データの入力はBIMで自動化
吹きつける風や近くを走る自動車の影響によって、ビルには微小な振動が日常的に発生する。内部の居住性を損ねるほか、精密機器に影響を及ぼす可能性もある。大成建設は環境振動の予測評価を短時間に高精度で実施できるように、解析に必要な3次元データの自動作成ツールを開発した。 - 業界初、建物における音響・振動解析の新計算手法を実用化
大成建設は、鉄筋コンクリート造の音響や振動を効率的に解析する計算手法の実用化を発表した。従来より予測時間が半減し、複雑な形状の建物でも音響・振動を高精度に予測が可能で、業界では初めての試みとなるという。 - インフラの微小振動を低電力に測定、日立が新型センサーを開発
日立製作所は、地盤や構造物からの微小振動を高感度かつ低消費電力で検出できる加速度センサーを開発した。資源探査などに用いられているセンサーと同等の高感度性能を、従来の半分以下となる消費電力で実現できる。