インフラの微小振動を低電力に測定、日立が新型センサーを開発:検査・維持管理
日立製作所は、地盤や構造物からの微小振動を高感度かつ低消費電力で検出できる加速度センサーを開発した。資源探査などに用いられているセンサーと同等の高感度性能を、従来の半分以下となる消費電力で実現できる。
日立製作所は、地盤や構造物からの微小振動を高感度かつ低消費電力で検出できるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)加速度センサーを開発したと発表した。資源探査などに用いられている加速度センサーと同等の高感度性能を、従来の半分以下の消費電力で実現するという。
従来のMEMS加速度センサーでは、回路ノイズを低減するために消費電力を2乗に比例して増やす必要があり、高感度化と消費電力の低減を両立することは困難だった。今回開発した加速度センサーは、独自構造を採用したMEMS技術によって高感度化し、同社の回路技術と組み合わせることで低電力化を両立させた。
新型MEMS加速度センサーの技術
一般的にMEMS加速度センサーは、弱いばねで保持された可動する錘(おもり)と、錘の動きを検出して制御する回路で構成されており、振動(加速度)が加わることで生じた錘の動きの変化を電荷として検出し、錘を静止状態になるように制御する。
従来構造のセンサーは錘が動くときに発生する空気抵抗がノイズとなり、高感度化の妨げとなっていた。そこで同社では流体解析を行い、SOI(Silicon On Insulator:薄い絶縁膜を挟んで2枚のシリコンウエハを貼り合わせた基板)基板で構成された錘全面に入口と出口で径の異なる貫通孔を形成。この貫通孔から空気を逃がすことで空気抵抗を約半分に低減した。
また、センサーの回路についても新機構を採用した。従来センサーでは、同じ電極を用いて錘の動きの制御と検出を行うため、それらを交互に切替える方式が用いられている。よって制御できない期間を補うために、制御には高電圧が必要となり、消費電力が高くなっていたという。本センサーでは、制御用と検出用の電極を独立して配置することで、常に制御と検出を行うことが可能となり、制御時の出力電圧を約60%に低減することができたという。
これらの技術により開発したセンサーを評価した結果、高感度性能(ノイズレベル30ng/√Hz以下)を発揮しつつ、従来の半分以下の消費電力である20ミリワット(mW)で動作できることを確認した。
同社では、インフラモニタリングなどで実施される構造物や地盤の大規模な微小振動検出が、高感度かつより低消費電力で可能になるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- MEMSセンサーと無線で構造物診断、配線不要と高精度が特長
大成建設は2017年11月、横河電機、長野日本無線、東京大学と共同で構造物モニタリングシステムを開発したと発表した。新開発のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサーと無線技術により、長期間にわたり構造健全性を判定できる。 - 建物のモニタリング状況を見える化、平常時から地震時も
東急建設は富士電機と共同で、地震時から平常時まで建物のモニタリング状況を見える化し、建物の健康状態を診断する構造ヘルスモニタリングシステム「4D-Doctor」を開発した。 - 供用中の橋梁を遠隔監視、カメラとセンサーで維持管理を効率化
西松建設と大日本コンサルタントなどで構成するコンソーシアムは、センサーやカメラで供用中橋梁を遠隔監視できるモニタリングシステムのプロトタイプを開発。福岡県久留米市にある築42年の道路橋で実証実験を開始した。道路橋梁の点検後に任意のポイントを継続的にモニタリングできるようにするなど、維持管理コストの効率化や負荷軽減に貢献するシステムだという。 - 走りながらトンネルのヒビも自動検出、三菱電機がインフラ向け新サービス
三菱電機はトンネルなどのインフラ向け解析・計測サービスの提供を開始。専用車両で走行しながら効率良く計測が行えるのが特徴で、0.3mmのひび割れも自動検出が可能だという。 - 橋の劣化状態を「貼るだけ」で把握できるフレキセンサー
産業技術総合研究所と大日本印刷は、橋などの道路インフラ構造体設備に貼り付けるだけで、ひずみ分布をモニタリングできるフレキシブル面パターンセンサーを発表した。 - 進むインフラ老朽化、“達人頼み”を補う技術が続々登場
日本の道路や橋梁、トンネルなど、インフラの老朽化が加速している。いまだに多くを人手によって点検・整備・補修しているこの領域だが、労働人口減少により現在の手法では対応が難しくなり、先進技術の活用に注目が集まっている。2015年7月22〜24日に東京ビッグサイトで開催された「インフラ検査・維持管理展」での出展内容を紹介する。