打設作業員を6人から2人に省人化、清水建設が自動打設システムを開発:山岳トンネル工事
清水建設は岐阜工業と共同で、覆工コンクリートの自動打設システムを開発し、和歌山県のNEXCO西日本発注の山岳トンネル工事に適用する。
清水建設は、山岳トンネル工事の生産性向上と品質管理の高度化を目的に、トンネル用建設機械の製作を行う岐阜工業と共同で、覆工コンクリートの自動打込み・締固めシステムを開発した。2019年11月20日から、和歌山県内の湯浅御坊道路川辺工事(発注者:NEXCO西日本関西支社)に導入し、標準配合(中流動コンクリート)による覆工コンクリート打設に適用する。
作業員を苦渋作業から解放するとともに、施工品質の均質化を図るシステム
山岳トンネル工事の覆工コンクリート施工では、技能労働者が狭隘(きょうあい)な作業空間の中で、コンクリートの打ち込みや締め固めなどの作業に従事しており、作業負荷を軽減する対策が求められている。また、品質面でも、締め固め状況の判断などを熟練技能労働者の経験と勘に頼らざるを得ない状況にあり、品質確保も重要な課題となっている。
新システムは、型枠バイブレータとコンクリートセンサーを各所に配置した移動式型枠(セントル)と、セントル端部からコンクリートを充填(じゅうてん)する自動打込み装置で構成される。主な特徴としては、センサーが検知した定量データを基に、コンクリートの打ち込みから締固め、打ち止めに至る一連の打設作業の進捗を自動制御する。
コンクリートの打込みには、打設の進捗に応じてコンクリート配管の切り替えや打ち込みノズルの移動を自動制御するマニピュレータ装置を利用。マニピュレータ装置は、2本の打込みノズルを備え、セントル端部の鋼製枠に設けた打ち込み口の下部から上部へと順にノズルを移動させながら、コンクリートを充填していく。各打ち込み口から圧送されたコンクリートの打ち込み高さが、所定の位置まで達したことをセンサーが検知すると、その場所での打ち込みが完了し、ノズルは上部の打ち込み口へと自動的に移動する。
一方で、コンクリートの締め固めには、型枠に設置したバイブレータを利用する。型枠自体を振動させることで、コンクリートを締め固める仕組み。完了のタイミングは、センサーが計測したコンクリートの圧力や温度、型枠の沈下量などのデータからシステムが判断する。
これにより、打設作業を従来の6人から2人に省人化できるだけでなく、技量に依存しない定量的な指標に基づく品質管理が実現する。
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