鹿島建設は、ケー・エフ・シーと共同で、山岳トンネルの品質管理試験で用いる新たな「ロックボルト引抜き試験機」を開発した。
試験機を軽量化させ、組み立ても不要に
新型試験機は従来型と比べ、軽量化とコンパクト化を図り、さらに油圧ポンプの電動化によって、これまで2人1組で行っていた引抜き試験を1人で行えるようになった。測定結果もデジタル化されており、正確かつ確実なデータの取得と自動記録が実現する。
山岳トンネル工事では、トンネル掘削に併せ、周辺の地山に一定間隔でロックボルトを打設して、地山の安定性を向上させている。この品質管理では、ロックボルトの引抜き試験を行って、ロックボルトの変位量の測定や定着度合いを確認している。
国土交通省の管理基準によると、試験はトンネル延長50メートルに1回(一般的な月進で2週間に1回程度)の頻度とし、1回あたりの計測箇所はトンネル側壁や天端など、均等な距離を置いた3カ所で行うことが求められている。
試験の実施にあたっては、打設したロックボルトに引抜き用の試験機を取り付け、油圧ポンプで段階的に荷重をかける。しかし、従来型の試験機は、部品数が多く、総重量も30キロと重く、試験場所への持ち運びや狭い高所作業車の上で組み立てるには、多大な労力を要していた。また、作業員は、1人が手動油圧ポンプを用いて、ロックボルトに人力で荷重をかけつつ、もう1人が変位量を読み取って記録するという2人1組での作業が基本だった。
新型試験機は、総重量を30キロから13キロに軽量化し、加えて複数なパーツも一体化され、煩雑な組み立てが不要となったことで、運搬時や試験機の設置や撤去時の作業負担が大幅に軽減される。試験荷重を与える油圧ポンプも手動から電動式となり、変位量の測定が単独で行えるようになった。機械の設置から、試験、写真撮影、撤去までに掛かる時間は、従来の平均約8分から約3分へと大幅に短縮される。
計測したデジタルデータは、無線通信を介してタブレット端末に自動的に記録されるため、ヒューマンエラーの無い確実なデータ取得が可能になった。データ自体は、タブレット端末で変位履歴をタイムリーにグラフ表示され、試験後には専用アプリで簡単に管理帳票を作成できる。
新型の試験機は、有用性が確認された岩手県宮古市の「宮古盛岡横断道路 新区界トンネル工事」での実証実験を経て、高知県高岡郡日高村の「日下川新規放水路工事」、福島県大沼郡の「博士トンネル(会津美里町工区)工事」でも既に適用されているという。
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