「鉄筋継手」をAIで自動検査、NTTコムウェアと清水建設が2020年に試験運用へ:AI(2/2 ページ)
NTTコムウェアは、業務量が膨大な一方で、熟練者の経験に依存している鉄筋継手の検査業務を、独自のAIで自動化する技術を開発した。スマートデバイス上のアプリから撮影するだけで、継手部分の球の形状が適正化かを判定する。2020年中の実用化を目指し、同年1月から、ともに開発を進めてきた清水建設の実現場でトライアルを開始するという。
検査項目5つをAIがリアルタイムで自動判定
なぜ対象がガス圧接継手なのかについて、澤氏は「品質管理が重視される基礎・躯体工事の継手のなかで、年間にして約3000万カ所にも及び、全体の約7割を占めるガス圧接継手に着目した」と説明する。
ガス圧接継手は、鉄筋の接合部に圧力を加えながら、加熱し、接合端面を溶かすことなく赤熱状態で膨らみを作り、接合する方法。現場での検査では、専用の測定器を使って、1.膨らみの直径、2.長さ、3.折れ曲がり、4.偏心重、5.片膨らみ、6.圧縮面のズレの計6項目を人の目視によって確認している。この方法では、おおよそ1カ所につき、5分を要してしまうという。
AIは、このうち人の目でなければ判断できない圧接面のズレを除く、5項目に対応する。スマートフォンなどの撮影時には、撮影位置を示すガイドが表示され、正しく撮影すれば、Deeptectorが背景に左右されず、継手の輪郭のみを検出。判定ロジックに従って5項目の可否を判定する。判定結果も、OK/NGが画面に表示される他、5項目のうちどれに引っ掛かったか計算式も示されるため、不良となる原因を突き止めることもできる。
澤氏は、「1カ所あたりの検査が20〜30秒の短時間で完了するだけでなく、検査結果をデータで残せるため、点検の証明や品質の向上にもつなげられる」と話す。
鉄筋継手AI検査は、これまでに清水建設協力の下、数百枚の画像を教師データとして検証を進めてきた。今後は、2020年1月〜3月の期間で現場検証に移行し、光の届きにくい暗所や粗い画像での判定精度の向上などを行う。その後、2020年前半には検査員の研修用ツールとしての運用を見込む。
将来的には、「鉄筋工事のボルト締めや基礎工事のアンカーボルト間隔など、建設業の他の工事検査業務にもAI検査の適用範囲を拡大し、運輸業界(車両、線路)や自治体(道路、橋梁、トンネル)へも展開していく」とロードマップを示した。
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