応用地質は、道路トンネルなどインフラ構造物のコンクリート健全度をAIで自動判定するシステムを開発した。
AI判定で熟練度に関係なく、一定の点検品質を確保
国土交通省の発表によると、道路トンネルは全国に約1万1000カ所存在し、2033年には、このうち42%で建設後50年以上が経過するとされている。一方で、道路法に基づく国土交通省令によって、国や地方公共団体などの道路管理者には、5年に1回の近接目視点検と健全度評価を行うことが義務付けられている。
そのため、市町村などの自治体では、少子高齢化に伴うメンテナンス事業の担い手不足や老朽化の進行による維持管理費用の増加に伴い、点検にかかる負担は年々高まっている。
応用地質では、こうした現状を踏まえ、トンネル近接点検の生産性向上と担い手の確保、技術の品質維持に貢献する目的で、トンネル覆工コンクリートの健全度をAIで自動判定するシステムを開発した。
新システムは、道路トンネル定期点検要領で、トンネルの全延長に対して覆工表面の浮きや内部空洞を確認するため、「打音調査」を推奨していることに沿って、コンクリートハンマーによる打撃応答波形の違いを機械学習で分析し、コンクリートの健全度を評価する。AIによる劣化度合いや浮き・剥(はく)離状態といった判定結果は、点検員のスマートフォンなどへリアルタイムに表示される。
打音調査でのコンクリートの劣化診断は、技量や経験により診断結果に差が出ることがあるが、システムではAIが劣化状況を自動診断するため、技量や経験の差に関わらず、一定の点検品質を確保できる。
応用地質では、今後は橋梁(きょうりょう)など、その他のコンクリート構造物にも適用できるように、新たな開発を進めていく方針を示している。
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