20億円を投じICT、IoTトンネル工事システムの開発に着手、清水建設
清水建設は、ICT、IoTなどの先端技術を活用して、山岳・シールドトンネル工事を対象に生産性と安全性を向上させる次世代のトンネル構築システムの開発に着手する。投資額は約20億円で2020年の完成を目指す。
清水建設は2018年7月19日、ICT、IoT、人工知能(AI)などの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の開発に、20億円を投じて着手することを明らかにした。2020年までに全体システムとして完成させる。
トンネル工事の生産性向上と安全対策の両立を目指す
開発の背景には、熟練の技能労働者の大量離職が懸念される中、入職者確保と並び、生産性向上が建設業界での喫緊の課題となっており、国土交通省では、ICTの活用を柱とする「i-Construction」の活用を促している。現状では、土工が先行しているが、今後は舗装工、しゅんせつ工、橋梁(きょうりょう)、トンネル工事まで工種が拡大することが見込まれることがある。また、トンネル工事のなかでも、山岳トンネル工事は、重篤災害の発生件数が下げ止まりの状況にあるとされ、安全対策も課題の一つとされている。
清水建設では今後、山岳・シールドトンネル工事を対象に、最新技術を用い、生産性と安全性の飛躍的な向上を図る次世代型トンネル構築システムの開発に取り組む。
システム開発は、ヒューマンエラーをセンシング技術でカバーする「支援的保護システム」、AIを搭載した建設機械と作業者が協調して協働作業を行う「Safety2.0」のコンセプトを導入する。
機械の位置・動き・コンディションの他、作業員の姿勢・動き・コンディション、騒音・粉じん・温度といった環境データなど、建設現場のあらゆる情報を集約。データをAIで解析してリスク情報を評価し、リアルタイムに施工管理者へ伝達。施工方針やリスク対応の監視、安全保護を目的に、建設機械にはIoT環境でコントロールし、作業員には着用しているウェアラブル端末などで知らせる。この仕組みにより、生産性と安全性を兼ね備えた革新的なトンネル構築システムを実現させる。
また、センシング技術で、熟練工が持つ経験知を定量化し、AI建機の自動運転などを実用化し、大幅な省人化・省力化を図ることも目指す。
今後、本システムの要素技術として、山岳トンネルについては、地山・切羽の状態監視、切羽・坑内作業支援、施工情報管理などの高度化技術、シールドトンネルについては、熟練オペレータのシールド機操作行動を再現するAI制御モデルなどの開発を進める。これらの技術を実工事に逐次投入しながら、トンネル現場の生産性・安全性の向上を図り、国民の生活と安全を守る良質な社会インフラの整備に寄与していく考えを示している。
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