「全天球カメラ」と「寸法計測ソフト」で既存建物内を2日でCAD図面化、作業時間が従来の3分の1に
大成建設は、全天球カメラで撮影した360度パノラマ画像を基に、既存建物内を効率的に図面化する手法「T-Siteview Draw」を開発した。リニューアル工事における現地調査を迅速化し、建物管理者や利用者への影響を大幅に軽減するとともに、省人化によるコスト削減ももたらされる。
大成建設は、全天球カメラで撮影した360度パノラマ画像を基に、既存建物内を効率的に図面化する手法「T-Siteview Draw」を開発した。
リノベ工事の現地調査の迅速化や効率化が実現
近年増加しているリニューアル工事やリノベーション工事は、既存建物の管理図面が現状と異なる場合があるため、工事計画時に現地調査を行うことが必要とされる。従来の関係者立会いのもと、使用中の建物内の室内寸法や設備位置を手作業で計測する方法は、時間や空間の制約が発生するため、現地調査の迅速化や効率化が望まれていた。
こうした課題を解決するため、大成建設は工事予定箇所の現況を全天球カメラで撮影し、取得した360度のパノラマ画像をCAD図面化することで、手間を最小限化する新調査手法「T-Siteview Draw」を開発した。
T-Siteview Drawでは、全天球カメラを用いて最小限の基準寸法を計測し、360度パノラマ画像をワンショットで撮影するだけで現地調査が完了する。撮影した360度パノラマのJPEG画像は、カメラを中心とした上下左右前後の6枚の正方形画像に分割し、正六面体に貼り付け、「キュービックパノラマ画像」を作成する。その際、独自の補正機能により、曲線を直線として表現することができ、画像のゆがみや解像度の影響による誤差を最大でも5%程度まで抑えられる。
その後、キュービックパノラマ画像をズームスケープが開発したPC用寸法計測ソフトウェア「PanoMeasure2」を使って寸法を計測し、座標データを取得。DWG形式のCADデータとして図面化するまでが一連の流れ。座標情報は、デジタルデータとして取得できるため、図面作成の効率化が図れ、2〜3日ほどで、平面図、展開図、天井伏図などのCAD図面が作れるという。
これまでの人による実測と比較すると、準備を含めて作業時間が1/3〜1/5に短縮。全天球カメラで撮影した画像があれば、現地での計測漏れが無くなり、再調査も不要となる。
また、この調査方法では、脚立などを用いた危険を伴う高所での計測作業が要らず、調査員の安全性が図られる。小規模な調査であれば1人で計測が済み、省人化による調査コストの低減にもつながる。
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