大成建設がMSと協業、初手は地震による建物への影響や作業員の現状などを“見える化”:CEATEC 2019(1/2 ページ)
大成建設は、運用・保守事業も行える体制を整備し、これまでの建物の引き渡しだけでなく、建造物のライフサイクル全体を収益元の対象とするストック型ビジネスの展開を検討している。
大成建設は2019年10月15日、日本マイクロソフトと、AI・IoTを活用した施設運用・保守事業の変革(不動産価値の維持、利用者の満足度の最大化や建物運営管理業務の効率化)に向けて協業を開始したことを発表した。
「CEATEC 2019」(会期:2019年10月15〜18日、幕張メッセ)の20周年記念特別基調講演「Society 5.0を実現するIntelligent Edge Intelligent Cloud」内で、大成建設 営業総本部 ソリューション営業本部 常務本部長の岩田丈氏が今回の協業について説明した。
地震発生直後の建物の状況を見える化
岩田氏は、「あらゆる業種がサービスをITでつなげ、デジタル社会が形成されていく中で、建設業界もITを使用した情報活用は避けられない。データにより、顧客に対して価値創造を行える企業が、ビジネスの勝ち組になる」と警鐘を鳴らした上で、これまでの大成建設のITに関する取り組みや日本マイクロソフトとの協業で推進する事業について紹介した。
大成建設は、建物引き渡し後の施設運用・保守事業に早期に着目し、2019年7月に「AI・IoTビジネス推進部」を設立し、用途・機能別に役立つITソリューションについて構想を開始した。
また、日本マイクロソフトのパブリッククラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」と「Windows 10 IoT」ベースのエッジデバイスを採用し、建物や利用者のさまざまなデータをIoTセンサーなどで収集。その後、各種データを可視化し、AIによる分析結果をもとに、建造物内の設備の自動制御などを行うクラウドサービス基盤を構築した。
今回の協業により、「地震発生直後の建物健全性の把握」や「施設の統合運営管理」「生産施設における従業員の作業状況の“見える化”」の3つを初弾として事業化し、2019年度後期から順次展開していくという。
地震発生直後の建物健全性の把握では、地震が起きた際に建設物の状況を迅速に評価し、所有者や管理者のスマートフォンなどにタイムリーに通知するシステム「T-iAlert Structure」を開発していく。T-iAlert Structureは、安価で高性能な加速度センサーを建築物の構造的特性を考慮した適切な間隔で設置して、地震後に計測した加速度から層間変位角を算定し、健全性を判定する。
このシステムを、施設に組み込むことで、従来時間を要していた専門家による応急危険度判定が不要になるとともに、定性的な評定が進められ、重要業務の継続や帰宅困難者の受け入れが円滑になる。
データを収集・管理・運用するためのクラウド基盤としては、Microsoft AzureとWindows 10 IoTベースのエッジデバイスを利用する。すでに工場を所有する製造業や自治体などから引き合いを得ており、今後数年で1000件の導入を予定している。加えて、最新のセンサリング技術とリスクマネジメントを組み合わせることで、ユーザーのBCP戦略を後押しする。
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