乾電池のみで数年間も稼働するLPWAネットワーク「Sigfox」:Sigfoxが変える建設現場の維持管理(1)(2/2 ページ)
近年、建設業界では、事故の発生を防ぐことを目的に、構造物などの状況を可視化するIoT機器やシステムの導入が広がっている。例えば、橋梁(きょうりょう)などにセンサーを取り付け、損傷具合を遠隔地で確認可能なシステムなどが挙げられる。こういった状況の中、IoT機器を低コストで運用できるネットワーク「Sigfox」に関心が集まっている。本連載では、京セラコミュニケーションシステム LPWAソリューション事業部 LPWAソリューション部 LPWAソリューション1課の海野晃平氏が、Sigfoxの概要や現場での活用事例などを説明する。
シンプルな無線通信規格「Sigfox」の利点
Sigfoxのネットワークの仕組みは、以下のように非常にシンプルである。
- IoTデバイスはセンサーを使い、温湿度などの情報を取得する
- センサーから取得した情報をSigfoxプロトコルで基地局に送信する
- メッセージを受信した基地局はSigfoxクラウドへデータを送信し、データはSigfoxクラウドに蓄積される
- クラウドのデータを各社のIoTプラットフォームに転送し、可視化や分析を行う
この仕組みはグローバルで統一されており、世界中どこからでも利用可能である。つまり、Sigfoxネットワークを使って開発したソリューションをそのままグローバルに展開でき、料金モデルも自国のネットワークオペレーターと契約することで、他国のネットワークを利用することが可能である。
電力消費を抑えるため単純化された通信仕様
Sigfoxネットワークの通信は、電池で長時間運用することを考慮して、非常に単純化された通信仕様となっている。IoTデバイスはデータを送信する時のみ、トランシーバーを起動させ、送信以外の時はスリープ状態となるため、待機電力をほぼ消費しなくてよい。省電力を実現するための仕様として、最大12バイトのデータを1つのメッセージとして送信する。
12バイトは小さいサイズと思われるが、センサーや計器データであれば、実用に耐える十分な長さである。また上り通信時に下り通信を要求することで、8バイト固定長の下りメッセージを送信することができる。この下り通信を利用することで、デバイスの制御や設定変更が可能となる。
年額100円からの低価格な通信費
連載第1回では、Sigfoxネットワークの概要について述べた。Sigfoxはセンサーに最適化された低容量・低速・長距離通信技術である。その結果、「年額100円※からの低価格な通信費」「乾電池で数年間稼働可能な低消費電力」「シンプルな技術による低価格デバイス」を実現している。日本でサービスが展開されてから2年半が経過し、Sigfox通信機能を搭載したIoTデバイスの開発・導入が各所で進んでいる。
次回の第2回では、建設業でSigfoxネットワークが活用されている事例として、傾斜監視システム、落石監視システム、ひずみ監視システム、水位監視システムについて紹介する。
※通信料金は契約回線数および1日あたりの通信回数によって異なる。
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