壁を乗り越え建設BPRを推進する秘策、「全社規模のマインドセットで改善の灯をともす」:建設現場におけるBPR(業務改善)の必要性と実践ポイント(3)(2/2 ページ)
ここ数年、ICTの著しい発展によって建設業界でも、その有効な活用方法が設計・施工・維持管理の各工程で検討され始めている。新たなソリューションを導入するには、さまざまな既存の障壁が立ちはだかり、ときには既存の業務形態を変革することも迫られる。ビジネスルールを抜本的に設計し直す「BPR(Business Process Re-engineering)」。建設業界で導入することによって何が変わり、そのためには何をすべきか、プロレド・パートナーズが数々の建設会社でBPRをコンサルしてきた実績をもとに、本連載で解説していく。
業務内容を徹底して見える化し、改善に取り組む
■推進ポイント2 「全社規模のマインドセットで改善の灯をともす」
建設現場で働く人達は、全員がプロとしての気概や誇りを持っている。そのような中で、これまでのやり方を根本から否定していくBPRの取り組みは、必ずと言っていいほど現場の強い抵抗に遭うため、現場の「マインドセット」は不可欠である。
マインドセットには、トップの号令や行脚などの「トップダウン型」と、改善結果の生かし方、改善後の業務内容や役割分担に関する説明などを行う「ボトムアップ型」がある。双方に共通するのは、当事者を改善に巻き込み、将来像を目に見える形で示し、不安や不信を払拭(ふっしょく)しながら改善を推進する点である。
なお、マインドセットは一度やって終わりのものではない。トップダウン型とボトムアップ型を状況で使い分け、継続的に実施する必要がある。
■推進ポイント3 「徹底した“見える化”で業務内容を丸裸に」
「見えないものは改善できない」、これは改善の定石である。そして見えていないことの方が断然多いのも実態である。
見えていないものに対して、何か変えようとしても、当然現場は抵抗を示し、関心を抱くこともない。一見心理的な側面が強い話に思えるが、現場とは不思議なもので、事実を示し理解が得られれば、その後のアクションは実に早い。極めて合理的でもあるのだが、現場の「もっと改善」「もっと良く」といった「もっと」を追求する姿勢にはいつも感心させられる。
また、「見える化のコツは何か?」と聞かれることも多いのだが、当社は「着眼大局」にあると回答している。いきなり重箱の隅をつつくようなやり方は良くないし、膨大な時間を使って局所ばかり事実確認しても、それが的外れとなり徒労に終わる可能性が高いからだ。
見える化は、業界を問わず、組織や集団がうまく仕事を進めるための原動力とされているが、正にその通りである。
建設BPRで既成概念や固定観念をブレークスルー!
以上、「建設現場におけるBPR」について当社の見解を述べてきた。
冒頭で述べた建設現場の生産性革命(i-Construction)(図8)の根本には、製造業並みの生産性水準を目指すという建設業の強い思いが込められている。
建設業では、「一品受注」「現地屋外作業」「労働集約型作業」などの特性があることから、製造業で進められてきた、ライン生産方式、セル生産方式およびオートメーションなどの生産性向上策に取り組むことが困難であるとの考えが根強く残っている(図8)。
その様な考えに対して、これまでの既成概念や固定観念を払拭する取り組みが生産性革命であり建設BPRであるが、これは意識改革でありマインドセットの形成に近い。当社も建設現場のBPRを支援する中で、結局は意識改革やマインドセットの形成が肝になっていることに度々気付かされる。
これまで3回にわたり、建設BPRの必要性や進め方について述べてきたが、本連載で紹介した4つの実践ポイントや3つの推進ポイントをヒントに、建設現場における生産性を向上させ、魅力ある建設現場作りを進めていただきたい。本連載が、読者ひいては建設業の発展の一助となれば、喜ばしい限りである。
著者Profile
紫牟田 涼/Ryo Shimuta
大手メーカーにて、生産技術、生産管理に従事。その後、SCMに強みをもつ総合コンサルティング会社にて、製造業、建設業、流通業、公益企業など、幅広い業界を対象に、ビジョン・事業計画の策定、各種施策の実行に従事し、取締役 統括本部長を歴任。プロレド・パートナーズ参画後は、BPRとSCMを中心としたコストマネジメント案件を手掛けている。
【訂正】記事の初出時、図8の図版が誤って掲載されていました。上記の記事は訂正済みです(2019年9月18日17時)。
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