鹿島建設は、フランスの機械メーカーRobodrill(ロボドリル)と共同で、山岳トンネル工事におけるロックボルト工の穿孔からモルタル注入、ロックボルト挿入までの一連作業を完全機械化するロックボルト打設専用機を開発した。既に国土交通省 四国地方整備局発注の高知県で施工を進めている「日下川新規放水路工事」に適用したという。
穿孔/モルタル注入/ロックボルト挿入の一連の作業を行うロックボルト打設専用機
ロックボルト打設専用機の適用により、作業員にとって肉体的負担の大きいロックボルト挿入作業が減り、肌落ちの危険性のある切羽近傍での作業がゼロになる。さらに、ガイダンスシステムを搭載しているため、従来、人力で行っていた座標測量が不要となり、人員の削減や測量時間の短縮にもつながる。
2018年に同社は、人力作業が主体のロックボルト工の機械化第1弾として、北海道新冠郡の大狩部トンネル工事で、モルタル注入とロックボルト挿入作業の機械化施工を実現した。その後、安全性の確保、生産性および品質の向上を目的に、さらなる機械化の進展を図り、最終的にはロックボルト工全般の自動化を目指して取り組んできた。
こうした中、今回は機械化の第2弾として、穿孔、モルタル注入、ロックボルト挿入までの一連の作業を、1本のブームで連続して行うことができる専用機を開発した。
ロックボルト打設専用機は、汎用のホイールローダーをベースに、前方にロックボルト工打設専用ブーム1本と、装薬作業などを行うバスケットを実装した作業用ブーム2本、後方には油圧パックを搭載している。加えて、穿孔位置と打設角度を示す相対座標によるガイダンスシステムを装備している。
これにより、センターブーム1本で穿孔からモルタル注入、ロックボルト挿入までの一連の作業を完全に機械化できる。その結果、苦渋作業であった高所でのロックボルトの装填(そうてん)作業が減り、切羽近傍での作業が無くなり作業員の安全が確保される。ガイダンスシステムを用いることで、測量作業の人員減・時間短縮ももたらされる。
ロックボルト工打設専用ブームには、穿孔用ガイドセル、モルタル注入用ガイドセル、ロックボルト挿入用ガイドセルを搭載し、それぞれのガイドセルが同心円上で動作する。一度機械をセットすればブームを動かすことなく、穿孔からロックボルト挿入までの一連作業が可能で、ロックボルトホルダーは1回の補給で最大9本(ガイドセル:1本、チェンジャー:8本)を積載できる。
ロックボルト打設専用機では、既に打設したロックボルト頭部の位置を、ロックボルト工打設専用ブームの穿孔用ガイドセルで3点ピックアップすることで、次に打設するロックボルトの穿孔位置と打設角度を、キャビン内の画面でオペレータにガイダンスをする。専用機本体の絶対座標をトータルステーションなどの機器を用いて測量する作業が不要で、キャビン内にいる1人のオペレータによるブーム操作のみで、相対的な穿孔位置と打設角度を短時間に確定することが実現する。
高知県で施工中の日下川新規放水路工事に適用した結果、機械の操作性に問題なく、オペレータ1人でロックボルト工の一連作業が行えたという。また、ロックボルトを持ち上げ、孔に手で押し込む苦渋作業が無くなったことで作業環境が飛躍的に改善したとともに、ロックボルト1本当たりの打設効率が従来の1.3倍に向上したという。
鹿島建設では、専用機を山岳トンネル工事に積極的に展開していくとともに、ロックボルト工の自動化に向け、ロックボルト工打設専用ブームのフルオート制御やモルタル自動計量注入システムとの連動などを図り、より一層の施工の安全および効率化を目指すとしている。
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