トンネル工事のコンクリ吹き付けロボ、リアルタイムで切羽面の出来形を計測:トンネル工事
戸田建設、清水建設、錢高組、西松建設、前田建設工業、エフティーエスの6社は共同で、山岳トンネルのコンクリート吹き付け作業を自動化する技術の開発に着手した。同時にコンクリの厚さをリアルタイムで計測するミリ波レーダーシステムの実用化も目指し、トンネル工事に適用して有効性を確認した。
戸田建設、清水建設、錢高組、西松建設、前田建設工業、エフティーエスの6社は共同で、山岳トンネルの自動吹き付けロボットと、コンクリートを吹き付けた壁面の出来形をリアルタイムで測定するミリ波レーダー技術を開発し、実証実験で有用性を確認した。
3メートル離れても、1ミリの高精度で測れる「ミリ波レーダーシステム」
山岳トンネル工事では、トンネル掘削先端部(切羽)では現在でも、熟練技能者のリモコン操作による目視確認に依存した作業が行われている。コンクリートの吹き付け作業も、切羽からの岩片崩落や吹き付けた飛散物との接触リスクを避けながら、トンネル壁面を平滑曲面に仕上げる高度な施工技量が求められる。
そこで、戸田建設らは、ヒトの目に代わる「ミリ波レーダーシステム」を新たに開発。ロボットでの吹き付け作業中にリアルタイムで、設計時のCIMモデルと実測モデルを比較させながら、より精度の高い出来形確認を行う。
実証試験では、エフティーエス製のエレクター一体型コンクリート吹き付けロボットに、ミリ波レーダーシステムを搭載して行った。吹き付けロボットのノズル周囲に取り付けられたレーダーは、ミリ波を対象物に照射し、その反射波を捕捉して吹付面までの距離を測定。自動化に重要な要素技術となるコンクリの厚さの変化を、リアルタイムで計測できたという。
ミリ波レーダーシステムは、測定波が霧や塵(ちり)に対し、錯乱し難いことが特長で、3メートル離れたとしても、1ミリの高精度で測れる。レーザーやスキャナーによる吹き付け作業前後での測定把握とは異なり、作業中でも厚さの変化を捉える。
リアルタイムで、吹き付け壁面の出来形を遠隔モニターから把握することで、危険性が高い切羽に近い場所での確認をしなくて済むようになる。取得するデジタルデータからは、吹付け面とのノズル距離、角度を正確に制御できるため、コンクリートの壁面付着率を向上させることが実現する。
今後6社は、熟練技能者の吹付け作業データを各社の現場からデジタル値でクラウドに収集し、最適な吹き付け作業の分析と機械学習を重ね、AI制御での自動吹き付け技術の確立を目指す。
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